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絵筆の魔女
「わたし、女の子が好きかもしれない」
校庭を見ながら筆を動かしていた私は声の主を見つめる。
「何でそんなこと言うの?」
絵を描くことに意識を割いていたせいで言葉が上手く出てこなかなった。
「わたし、変なのかな?」
断じてそういう意味ではない。
「そうじゃなくて、それは私が聴いていいことなの?」
私は彼女とそこまで親しくないはずだ。
「だって、きっと黙っててくれるから」
他人だから話さないと言うことだろうか。そういう意味ならしかたない。
「…やっぱり、おかしいかな?」
質問の意図はわからない。
「そういうのって好みの問題じゃない?
高身長が良かったりとか、カワイイ系が良かったりみたいな話でしょ」
当たり障りのない答えであると同時に本心だった。
「もしかしたら、好きなタイプが変わるかもしれないし
結局、好きな人がタイプだったりするし」
風が吹いて、彼女の白いセーラ服の襟が揺れた。
彼女が何を思っていたのかはわからないけど、少し口元が微笑んだのだけは目に焼き付いた。
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