黄昏の占い師

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黄昏の占い師

「恋人ってどうやったらできるんだろ?」 「恋人のいない人間に聞くな」 ギーギーと椅子を鳴らすソイツを一瞥する。 「気になる子はいるんだよねー」 ああそう、と思いながらキャンパスに筆を添える。 「友達?」 「いや、あんまり話さないクラスメイト」 「ふーん」 興味はどうやっても湧いてこない。 「告白した方がいいかな?」 「やめとけ、あんまり知らないヤツに言い寄られてもキモイ。  王道通り、まずはお友達からだと思う」 夕焼けに染まる中、少し遠くからブラスバンドの音が聞こえてくる。 「共通の話題で話して、距離が近づかないと意味ないだろ」 恋とは自己中心な感情であるらしいと世に聞く。 「相手に理想を押し付けちゃいけないし、  かといって理想的である自分を演出しすぎてもダメ」 適度にほどほどに、自分らしくしていかないとどこかで綻んだ時に収集がつかなくなる。どこかの格言で、恋人は親友から選べなんて言われていた気がする。 「やっぱりお友達からか」 そうだそうだと頷きつつ、本当の所は私も知らない。それでも、何かは納得したようでそれで良さそうだ。
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