雨の足音

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 それからは雨の日も裏道は通らないようにしていたが、数年たったある日、またその裏道に入ってしまった。  あんなに怖かったのに、すっかり忘れていたのだ。  2度あることは3度あるという言葉通り、彼女はまた私の前に現れた。  私の足は凍り付いたように動かなくなった。  忘れていたことを後悔しても遅い。  そして彼女はいつものように消えた。    以前より少し我が家に近い街灯の下で。  表情の分からない距離にいるはずの彼女が、ニヤリと笑ったのを見たような気がした。  聞こえないはずの足音が耳にこびりついて、その後は昼でも私がその道を通ることはない。  その道を行くたびに家に近づいて、いつか家の前にいたらと思うと、私は怖くて震えることしかできないのだ。
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