雨の足音

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 我が家の最寄り駅は徒歩2分とかなり近い。  けれど、私がこの駅を使うことはめったにない。  反対隣りの駅がターミナル駅で便利だからだ。  徒歩30分と近くはないが、健康のためも兼ねて毎日歩いている。  夜遅くなっても大通りは明るく人通りも多い。  一人歩きもまったく怖くないが、ひとつ内側に入ればめったに人が通らない。  その裏道は街灯も少なく、私はできるだけ通らないようにしていた。  だが、雨の日は別だ。  私は近道だからとその道を急ぎ足で進む。  雨の日はなおさら人と出会うことも少ないが、その日は曲がってすぐに向かってくる人が見えた。  傘もささずに歩く人の表情は遠くて見えないが、髪の長い女性だということはわかった。  急な雨だったので傘を忘れたのだろうと考えていたら、街灯のあたりで彼女は消えた。  一瞬の出来事で驚きはしたが、雨で視界も悪かったので、きっと近くの家に入ったのだろうと私は気にもとめなかった。
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