記憶

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ある日、マサトが家に帰ってくるとあの家の子供が自分の部屋にいた。 「なんかねぇ、お母さんが帰って来ないからウチに連れてきたの。マサト、あんたちょっと遊んであげてよ」 スッと通った鼻筋と薄めの唇があの若い母親に似ていた。 小さくてまだ喋れないのか、人見知りだから喋らないのか、子供はただ黙ってマサトの顔をジッと見つめる。 ロクに意思疎通できない子供の相手をするのは苦労しそうだ。 しかし何も特別なことをしなくて良かった。 マサトが自分の好きなテレビを見ていると隣に座って一緒に眺めたり、マサトが本を読むと真似をして本のページをめくってみたり、一人遊びに慣れているのか相手をする必要もなかった。
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