18.ずっと、そばに

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18.ずっと、そばに

 もう、夏も終わっちゃったよ。  涼しくなった夕暮れ。屋上で一人空を見上げていたあたしは、狭いオレンジ色を写真に収めた。  スマホの中に閉じ込められた空は、晴れているのに今にも泣き出しそうな灰色が混じる。  あたしの感情までも、写し込んでしまったんだろう。  膝を抱えて顔を埋めた。  目を瞑って、何も見えなくなる。  聞こえてくるのは、誰かの楽しそうな笑い声と車の走行音。  また、陽太が笑顔でここへ現れてくれたら。毎日毎日、そう思いながら過ごしていた。  帰ろう。  そう思った瞬間に、手にしていたスマホが震え出した。  慌てて画面を見ると、そこに表示された名前に思わず持っていた手が震えてしまう。  あたしはゆっくりと通話ボタンをタップして、スマホを耳へと当てた。
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