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「え?! どうしたの、那月。傘、なかったの? 電話くれたら迎えに行ったのに」
家に着くなりずぶ濡れのあたしを見て、姉の美月は驚いて呆れながらも、優しく怒った。
すぐにバスタオルを手にして戻ってきた美月に、柔軟剤のふわふわとした柔らかなタオルで頭から包まれる。
「寒くない? お風呂入っちゃいな。風邪ひいちゃう」
足下にもタオルを敷いてくれて、その上に濡れた靴下を脱いで足を落とした。白いタオルに、汚れと一緒に滲む赤。そう言えば、途中からズキズキと足に痛みを感じていた。無言のままのあたしに、着替えを手に戻ってきてくれた美月は驚いている。
「足、怪我してたんじゃない? 大丈夫? お風呂でよく洗って。上がったら消毒してあげるから」
美月の心配する言葉に素直になれずに、あたしは急いで足を拭くと、「大丈夫。お風呂行く」それだけ言って、美月の手から着替えを取ると、爪先立ちしながらゆっくりバスルームへと移動した。
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