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「尾崎さん、代々木公園で遺体が」
「始まったか」
「そのようですね。今さっき、本部の人たちが大急ぎで出て行きました」
麹町で最初の十字死体が発見されてから十三日目。
“第三の十字殺人と思われる事件”は、これまでの一週間に一度という間隔を狭めて明るみになった。
昨日、シオリと瀬谷が出て行ってからというもの、彼らは庁内のあらゆる部署へ脚を運び、個人的なツテを用いて情報収集や捜査を着々と進めていた。
「シオリが行方不明になった」という嘘を流布して回ったのもその一環である。
ある者は純粋に心配や懸念を口にし、ある者は「さもありなん」といった具合に辟易してみせたりと、様々な反応を目の当たりにした。
シオリの真意こそ彼女のみぞ知るところではあるものの、尾崎と牧田にとって、この流言は怪しい動きを見せる者に目星を付けるにはいい手段であった。
そうして奔走しているうち、充分な睡眠もままならぬ朝を迎えた。
ここまできて殺人鬼を暴けなかったとなれば、牧田にとってそれは生き恥に他ならない。
常に最善を選択し行動してきたつもりだが、結果が伴わない努力など誰も求めてはいない。
彼女にとっては結果が全てであり、それこそが自らを強く肯定できる唯一の方法でもあった。
もはや全てを投げ打っても喰らい付いてやろうと滾る彼女の思いは、眼が眩むほどに煌々と赤熱していた。
「っし、気合い入れろ。絶対に見付けるぞ」
「はいっ」
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