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別に教室で食べてもよかったが、わくわくとノートを机から取り出す大上を見て趣味モードの大上を他のクラスメイトに見せたくない気持ちが沸き上がったのだ。まぁすぐにはそのモードにはならないと思うし、もしかしたらほとんどの奴が知っているかもしれない。それでも、趣味モード、と言っている大上の姿をなんとなく独り占めしたくなった俺は大上が好んでいるらしい昼食場所へ移動することになった。
「ここ! 結構人がおらんくて落ち着くんよ~。趣味に没頭できるし、風が気持ちええし、お昼寝にももってこいやねんで!」
そこで俺は初めて、大上が昼は殆ど一人で過ごしているということを知った。本人が気にしていない……というか普通に楽しそうに話すので思わず俺は聞いてしまった。
「いつも1人で食ってんの?」
……我ながらあまりにもストレートである。
言ってから「やべ」と思ったが、当の本人は「せやで!」と孤独の人とは思えない程屈託のない笑顔で言った。
「ウチ結構1人が好きやねん。ていうか、自分の時間を持つのを大事にしとってな。あ、勿論お友達とお喋りすんのもごっつぅ楽しいで! けど、やっぱりず~っと誰かと一緒っていうのは億劫でなぁ。やて、授業中は常にみぃんなと一緒やねんもん。部活も絶対誰かと一緒やん? やったら、お昼ぐらい一人でもええやんて思て、お昼休みになったら基本ここにきとるんよ。快適やでー」
話を聞きながら、俺は大上宵がどうして昼休み見かけないのかの謎が解けた。そして、”大上宵はこういった自由度から皆に好かれているが、特別好かれているということは殆どないという噂”の根幹を知ることもできた。
彼女は基本1人であり1人でないという、女子高生の中でも珍しい女子だ。
いや、最早人間の習性の中でも珍しい部類なのではないだろうか。男の俺たちでさえ、仲のいい奴らとつるむことが当たり前なのだから。
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