4人が本棚に入れています
本棚に追加
「およ?モテ男君が教室で1人とは珍しいやん」
恨めしい気持ちで窓の外を眺めていた俺は突然の声に窓から視線を外した。
振り向けば、眼鏡にお団子の女子。眼鏡をとったら可愛いだろうな、ていう印象が一瞬で浮かぶ子だった。聞いたことある声をしていたが、その声と容姿が一致しなくてすぐに名前を思い出せなかった。
「あー……誰?」
向こうは明らかに俺を知っている様子だし、初対面にしては距離が近い、というか俺の机の傍まで来てたなんてまったく気づかなかった。俺、結構窓の外の景色に集中していたんだな。心の中は嫉妬と妬みで不純だらけだったけど。
俺の質問に「えぇ」とショックを受けた様子だったが、あ、と思い出したように眼鏡を触った彼女は「あー、そっかそっか。かんにんかんにん、いつもと違ったな。ウチ、授業中は平気なんやけどさ。乱視やから文字を集中して読む時ってどうしても眼鏡が必要やから趣味の時はかけてるんよー。てことで、ほれ」と眼鏡をとり、団子に結っていたゴムをほどいた。
髪が肩に下りる瞬間、ふわりと甘酸っぱいフルーティな香りがして思わず動揺してイスをガタっとさせた俺は何人とも付き合ったとは思えないぐらいウブすぎた。少し恥ずかしくなった俺はそれを悟られないよう不機嫌な顔を演じるために精一杯眉間に力を込めていた、が。下ろした髪を耳にかけた彼女の仕草を見てひとりの名前が浮かんだ。
同じクラスの大上宵だ。
「あ、大上か……え、大上!?」
名前を言ってから、俺は自分の導き出した答えに驚いて声が裏返ってしまった。
大上宵。
俺と同じ高2で同じクラスの女子。運動部の中でも運動神経がずば抜けていて”活発女子”としてそこそこ目立つポジションにいる女子だ。男女問わずそこそこの人気者な彼女を学年で知らない奴の方が少ないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!