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今頃は運動部で汗を流し仲間と楽しそうに笑っている時間だろうはずなのに……何故、ここにいるんだ?
その疑問が顔に出ていたのだろう。大上はにっこりと眩しいぐらいの笑顔を浮かべると「今日はお休みやってん。ほんで趣味に没頭しとったんよ」と、ノートとペンを顔の横に出した。ペンは誰でも使ってそうなボールペンで、ノートにはクラスの大半が使っていそうなシンプルなノートだった。ただ、表紙にデカデカと「宵の趣味ノート」と書いてあるのは彼女のノートだけであろうが。
「いや~、ちょっとネタ切れしとってな。折角やしネタ探しの旅にでも出るか~って図書室飛び出してみたら、教室に絵になる男がおるんやもん。なんか憂いてるように見えてはいてんけど、話しかけずにはおられんくて。急に声かけてしもてかんにんな」
ペンとノートを手にしたまま指先だけそっと合わせて”ごめんね”のポーズをする大上の仕草は女子らしい可愛らしさと他の女子にはない元気の良さがあって不快にさせない雰囲気がある。とくに、クラスの中でも癖のある関西なまりが彼女の明るさをさらに醸し出していて彼女とお喋りするために近づく人も多いと言われるほど人気があるのが大上宵だ。
どこに言葉の引き出しがあるのが、ペラペラと口が止まらない彼女を改めて見た俺は、そういえば髪を下ろした姿は初めて見るな、と思った。毎日手入れしているのだろう。風が吹くとふわりとなびく髪は柔らかそうで、ふと気を抜いたら手を伸ばしてみたくなる魅力があった。時々耳にかける仕草は女性らしさがあって直視できないが、頬の横に手がくることで彼女の顔の小ささがよくわかる。学年の中でも整っている方に入る顔は普通にずっと見てられるぐらいに可愛く、運動部に所属している女子はやはり大体可愛い子が集うなと俺は勝手に納得していた。
だがその中でも、大上宵はレベルが違う。
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