大上さんの表裏

5/7

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 最初は大上(おおかみ)のマシンガントークに相槌を打つ程度の会話だったが、次第に今日の授業の話になってくると、あの先生はこういう反応する、あそこの席にいるあいつはあの時間絶対寝る、という共通の話題がどんどん出てき始めクラスメイトということもあり話題は尽きるどころか盛り上がっていた。とくに来週の授業で猿山へ行く話になると、お互い熱弁が始まっていた。 「ウチ、お猿さんって間近で見たことなくってめっちゃ楽しみやねん~。ふわふわかなぁ。どんな声で鳴くんやろ?」 「俺もちょー楽しみっ。可愛い赤ちゃん猿とかもいるって聞いたし、ワンチャン抱っこできねぇかなとか思ったりしてる」 「あー! わかるー! きっと警戒されて触れへんのやとは思うんやけど、もしワンチャンいけたら触りたいよなぁ」  自分の言葉に熱烈に同意してもらうという経験は新鮮で、俺も先ほどまでのちょっとした緊張を忘れて興奮して喋っていた。人は話すと身体が熱くなる、と聞いたことがあるが、初夏が近づき始めた季節であるため俺は自分の身体に汗が滲み始めるのを感じた。流石に暑い、と思った俺は火照った身体を冷やすべくシャツのボタンをはずし、胸元が大上に見えるのを一切気にせずばさばさとシャツを浮かせた。 「ハ!」 「ん?」  大上が声を上げると共に会話が止まったことで大上の視線が俺の胸元に釘付けなのに気づいた。シャツを動かしたことで汗が匂ったのだろうか、そういや俺って制汗スプレーとか滅多にしないからやばいぐらい汗くさいかも!?、と俺が冷汗をかき始めたところで「これは……っ」と宵が顔を近づけてきた。視線は、相変わらず胸元だ。  なんかついていただろうか、と自分の胸元を覗き込んだ瞬間「ほぉー!」と宵の明るい声が上がった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加