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女はポンと手を打った。
「あら残念。このサービスは十一時までという決まりなの。ごめんなさい。今日のは、つまり、待ちくたびれて寝てしまったのよ」
女は自分の失態をごまかす様な、いたずらっぽい笑みを浮かべると、左手で頬にかかる髪を耳に掛けながらベッドから降りてきた。その時、長いドレスの裾に片足を少しひっかけ体がよろけた。
ロバートは思わず手を差し出して女をささえた。
「ご、ごめんなさい」
「いや」
やや気まずい雰囲気で女はロバートを見上げる。
「……本当にごめんなさいね。ベッドで眠ってしまってたなんて判ったら大目玉よ。このことは内緒にしてもらえるかしら?」
ロバートは肩をすくめた。
「まだ信じられないけど、まあ、判った」
「ありがとう。二度と会うことはないと思うけれど、お元気で。いい旅を」
ロバートは納得した訳ではなかったが、もう疲れていて早く休みたかったし、この女もそれほど悪い人間には見えなかった。それで、納得いかない気持ちを解消させることは諦めてしまった。
ただ、一つだけ気になることはあった。
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