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アマンダはドアを閉めると、それを背に寄りかかり、ふうっと一息ついた。
そして、すぐに廊下を歩き始める。
まずい!まずい!まずい!大失態だ。またボスに怒られる。
いや、今回のは今までで一番いけない。とうとう首を言い渡されるかもしれない。いや、まさか、そこまでは……。
化粧室へ入ると無人であることを確認し、洗面台の裏に張り付けていたポリエステル製のビジネスバッグを剥がし取って個室の中へ入った。バッグの中に準備されていたスーツに着替えながら考える。
スペシャル・スウィートにスペシャルな女がついてるって?バカバカしい!そんなサービスいくら何でもないわよ!この国にだって!
しかもアマンダ?ええ、そうよ、アマンダは一番のお気に入りの偽名。
でもこんな仕事で使う名前じゃない。そもそも今回、ターゲットに姿を見せるなんて予定はなかった。ただ彼の荷物から依頼されたデータを盗むか、荷物が間に合わなければ、盗聴器を仕掛けるだけでよかった。それなのに面が割れた!
荷物の到着が予定よりもずいぶん遅れたことが彼女の不運だった。
データがなかなか見つからず、盗聴器を仕掛けるしかないかと思ったところで宿泊客が入ってきたのだ。
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