35人が本棚に入れています
本棚に追加
私の予想では引きこもりを除いた四人の王子が食事を摂りに来ているはずだった。
だけどここには二人しかいない。
目をぱちくりするしかない私に、ベラは咳払いを一つすると、座っている王子に紹介を始めた。
「ザーラ様、イース様。今日から王子の世話係として着任いたしました者です」
ベラの言葉に続いて練習通りに挨拶を礼儀に倣ってする。
「初めまして。ティーナと申します」
私の挨拶の後、沈黙がおちる。
何かまずい事を言ったか。
そう思わずにはいられなかった。
その沈黙を破ったのは明るい、でも厳しいベラの声だった。
「と、挨拶はここら辺で、他の王子は⁉ ミルロ様はともかく、なんでリロン様とライド様までいないのよ!」
思わず目を見開いてベラを止めた。
王子に対してこのような態度をとっていいわけがない。
「ベ、ベラ?」
「あ、忘れてた。私はこの話方よ。礼儀は大切だけど、王子をまとめるのだもの。生ぬるかったらやってられないわ!」
「ああ、ベラのようにとまではいかないが、俺たちにそこまで丁寧にする必要はない。ベラは少しボリュームを抑えろ。耳が壊れる」
そこで口を開いたのは銀髪で青い瞳を持つ、第三王子ザーラ様だった。
一見、普通に会話をしたようにも感じた。
その隣にいるイース様は言われた通り、笑いもしないし一言も発さない。
「あなたたちがもっと普通になってくれればこんな態度とらなくてもいいんです!」
「その前に、世話係はもういらないと言ったはずだが?」
その時のザーラ様の目は鋭くて、さっきの話が嘘のようだ。
そうは言っても一度も笑ってはいないし、目や口調は鋭いままだ。
それに対しベラは負けじと食いつく。
「あなたたちの姿勢や態度を見直してから言っていただきましょう。それより、リロン様とライド様は? もしかして……」
ベラは苦い顔をしたまま、ザーラ様を見つめる。
ザーラ様は一度私を見るが、また冷たい顔をして手元の資料に目線を落としてぼそりと呟く。
「リロンは、女のところだろ」
ベラは予想していたのか頭を抱え、私に気遣いの眼差しを送る。
一目惚れされて城に入った身を考えれば、後がない。ではなく、ショックを受けるのは当然なのだろう。
でも私は目的のために城に入った。
しかも一目惚れの薬は本人を前にした時しか効果はない。
それにあと一週間もすれば効果はなくなるだろう。
だから浮気性というリロン様の行動はいつも通りなのだ。
でも私は見逃さなかった。
ザーラ様の目が泳いでいたことに。
これがどういう意味なのかまでは理解できなかったが。
「じゃあ、ライド様は……」
その時、勢いよく扉が開く。
そこには、ピンク髪に緑色の瞳。
スラっと背の高い第二王子ライド様が笑って立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!