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仕組まれた恋
城に入ると華麗な人々が集まって談笑していたり、優雅な音楽が流れていたり。
私には似合わないほどの輝かしい世界が待っていた。
そこに闇があると知らされていても目の前の世界に圧倒されてしまう。
アーリス族がどうしてこの城に入れたのかは未だに謎だが、おそらく力を使ったのだろう。
私たち一族には特殊な力が宿っている。
だがある日、その力を持った一族の人間が襲われ、力を奪われたという。
それが王族なのだ。
今日は王族が持つ力を探り、取り返す。
その目的を持った私を城にいれることが目的で城に入ったのだ。
バル様に続き、歩いていくと、一際目立っている男性がいた。
おそらく王族の誰かなのだろう。
身なりがしっかりしていることからかなり上の身分。
その周りを女性たちが囲っている。
王族も大変なのだなと思いながらバル様の方に向き直った。
「よいか、皆。準備をするぞ。ティーナ、そなたも準備を」
「はい、バル様」
私は先ほどの袋を握り締めてバル様に強く頷いた。
そして楽器隊の横で準備を始めた。
踊り子の服に身を包んだ私は一族の影に隠れて袋の粉を体に浴びた。
粉は瞬く間に体に浸透して消えてしまう。
「さあ、皆さま。次は遠路はるばるやってきた一族の唄と踊りです。どうぞお楽しみください」
バル様の横で王族の人間が大きく私たちを宣伝する。
私は一つ深呼吸をした。
ここで世界が変わる。
一歩、また一歩踏み出す度に私は自分を忘れた。
自信を持って胸を張って、堂々と前に踊り出る。
そして練習し続けてきた舞いを披露する。
人々が息をのむのがわかった。
今の私は普通に見えない。
惚れ薬の力があるから。
誰もが私に魅了されていく。
会場は私を見続ける。
舞いを踊るのも心地よくなっていく。
このまま踊っていたい。
人を騙すことよりも私は向いているから。
目的と矛盾するけれど、どうかこのまま踊らせて……
唄が止まる。
それと同時に私の舞いも終わる。
この先なんて起こらなくていい。
このまま私は……
「そこの娘」
礼をした私の前に現れたのは先ほど囲まれていた一人の男性。
その男性は左胸に手を当てている。
嫌な音が耳に響く。
「私は第一王子リロン。あなたを私の妻にしたい」
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