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リロン王子と共に部屋に案内されるのかと思いきや、私は別部屋に通され側近と向かい合って座っていた。
そこでは今までの経歴や身分、生まれを聞かれ、側近はどんどん顔を歪ませていった。
私の身は誰にも引き取り手のないさまよいの子。
そんな子を城にいれること自体があり得ない。
そういう理由から側近はどんどん顔を苦くしている。
このままでは帰されてしまうのではないか。
そうハラハラもするが、冷静を装いつつ戸惑いを見せるという演技をしてその場をしのいでいた。
すると、部屋にノックオンが響き二人で扉を見る。
「失礼します。ベラです」
「あぁ、ベラか。待っていた入ってくれ」
扉が開くとそこに待っていたのは側近と似たような恰好をした女性が立っていた。
その姿は綺麗で優しい瞳を持っていた。
「王様からの直々のお言葉です」
そう言ってベラさんは目の前の男性側近に書類を渡した。
「本当なのか?」
驚く顔をする男性に対し、ベラさんは苦笑して頷いた。
顔を見合わせる二人が一度こちらを向くと空気が変わる。
そして男性側近が一度咳払いをすると、空気が動き始める。
「我が国では今、恋愛結婚を重視している。そしてこれは王族を対象としたものだ。これは内密なのだが、君に教えることを許可する。そしてその結果、王子たちの人柄が重要になってくるのだが……」
そこで男性は渋い顔をしてベラさんの顔を一度見た。
その時のベラさんも相変わらず苦笑いをしている。
「この国には第一王子リロン様、第二王子ライド様、第三王子ザーラ様、第四王子イース様、第五王子ミルロ様。五人の王子がいる。その王子各々に少々問題があってね。世話係を一人つけて問題を治そうと努力しているのだが、世話係が皆、辞めたり、問題を起こしたりで現在、世話係がいないんだ。その月日はおよそ一年」
「一年も……」
体の体温がさっと下がる気がした。
一年もの間見つからない世話係。
それは問題が解決しないからという問題なのだろうか。
そんな疑問を持つ私に二人は心配そうな様子でこちらを見た。
「わかるかもしれないが、君にはその世話係をしてもらいたいとのことだ。もうこの際誰でもいいという風にもとらえられるが、今回の場合は仕方ない。それにリロン様が惚れた相手だ、少しは言うことを聞くかもしれない。もちろん、恋愛関係にはならないでほしいところだが、今回の場合。王子と本当に心を通わせることができ、五人の王子それぞれの問題を解決したならば王も考えるとのこと。つまり、君にはチャンスでもあり、我々からしたら厳しい期間になる」
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