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不安を持たせているのか希望を持たせているのか本来ならばわからないところだろう。
だが、使命を受けている私からしたらこれはチャンスなのだ。
母を救うチャンスを逃すまい。
決意に手を震わせえていると、ベラさんがようやく優しい微笑みを浮かべて私にウインクした。
「要するに、恋愛関係になってもいい。どんな手段を使ってもいいから問題を全員分解決しろってこと。その報酬で好きな王子と心が通っているなら妻にすることを許そうって話ね!」
ベラさんのあっけらかんとした物の言いように思わずあっけに取られていると、男性が慌てて訂正しようとベラさんの腕を軽く掴んだ。
「ベラ! そんな言い方は……」
「テルもそのくらいの話方じゃないと持たないわよ、この子。あの王子たちを育てていくんだから。それにこの王国は厳しそうに見えて緩いのよ。だから王子もそんな感じだし、私たちだって結婚してるし!」
「結婚……?」
テルとはこの男性側近のことだろう。
テルさんは顔を赤くして目を泳がせているが、覚悟が決まったのかかけているメガネをあげて少し笑った。
「ああ、ベラと私は階級は違うが側近で夫婦なんだ。それを許してくれる王だ。鬼のわけじゃない。だが、王子たちに悪影響、もしくは危害を加えようとした場合は話は変わるがな。見たところ、武器も仕込まれていない。そして本当に身元が不明ならこの城がほおっておくはずがない。そのような者をなんの事もなく帰したなど王が怒るだろうからな」
最初は緊張や不安、焦り、恐怖といった負の感情しかなかった。
でもこの二人の話を聞いて、この城が温かいことがわかった。
でも忘れちゃいけない。
忘れられないのはアーリス族の力を奪っていること。
だから私は目的を忘れちゃいけない。
お母さんを救うために。
「どうだい。やる気はあるかい」
「はい。やらせてください。自分にできる精一杯を出します」
こうして私の城での世話係としての生活が始まった。
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