王子の器

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王子の器

ベラさんとテルさんの話を聞いてから私はベラさんについていき、自室へと案内された。 世話係と聞いていたので大部屋か何かに通されると思っていたが、そこは自分の部屋として管理できるほどの広さを持った一部屋だった。 「今日からここで生活してね。部屋は自由に使っていいから。あーあ、また埃溜まってるよ」 ベラさんは金髪の髪を揺らしながらベッドやソファをはたいてくれている。 「ここ、一人で使っていいんですか? 広すぎるような……」 するとベラさんは微笑みながら私に向き直り明るい声を出した。 「いいのいいの、世話係なんて誰もやらないから一人だし。プライベートくらい一人じゃなきゃやってられないわ!」 二人の口ぶりを聞いていると本当に自分に務まるのかわからなくなる。 王子がどんな人なのかわからないが、何人もが音を上げたという。 そんな人たちを自分一人で動かすことの方が大変な気さえする。 不安で満ちている私にベラさんはソファに座るよう促した。 ゆっくり隣に座ると、ベラさんのいい香りが漂ってくる。 「まずは、私の自己紹介ね。私はベラ。さっきも言った通りテルとは夫婦で、二級側近。この城では階級によってやることが変わってくるの。私は王子たちを主に担当していて一級、テルは全てのことに関して関わっているわ。んで、私の年は25歳。あなたよりすこし年上かな」 楽しそうに自己紹介をしてくれたおかげで私の心臓の音も少しは静まる。 ベラさんが手を差し出してきて、自分の番だと気づくとすぐに戻るが。 「私は18歳のティーナです。私はいわゆるさまよい子なので話せるのはそれくらいですが……」 「なるほどね。まあでもこの城に世話係として入ってしまえば、哀れみと言うか同情しかかけられないからある意味大丈夫よ!私のことはベラって気軽に呼んで。敬語もなし。城の中ではそういう風にしてるのよ。まあこれは私だけだから気をつけてね」 あまりにも明るいベラは私の沈んだ心を照らしてくれる。 アーリス族から任された任務すら吹き飛ばしそうなほどの勢いで私に入り込んでくる。 でもそれがなぜか心地よかった。 今まで私に興味を持つ人がいなかったからかもしれない。 ベラは笑って私の前に手を指しだした。 次は何だろうと思うと、急に手を引っ張ってきて握手をした。 これがベラのやり方なのだろうと思うとすっきりする。 ここで私の新しい、生活が始まる。 任務にとらわれながらでもやっていけるかもしれないという希望が生まれる。
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