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ザーラ様の問いにすぐに答えたかった。
あなただと。
でもそれは今日の出来事を考えれば口にするのも躊躇われた。
もう誰にも危険に晒したくない。
もしかしたら私自身が危険に晒すかもしれないのに。
うつむくしかない私をザーラ様は抱きしめた。
「本音を言ってくれ、ティーナ。俺はお前を守りたい。ずっと一緒にいたいんだ。そのためにはお前の心を知る必要がある。ティーナ、お前はどうしたい?」
次々に入ってくる言葉たちが私の固い扉を開けようとする。
頭を撫でられる感触も、この温もりも離したくない。
これがバル様のせいで忘れていたのだとしたら私はそんな人に従いたくない。
「ティーナ。俺はお前を愛してる」
その言葉で止めきれない涙が溢れた。
ザーラ様の腰に手をまわし、声を震わせながら泣きながらザーラ様に言葉を向けた。
「私も、愛しています」
その瞬間、ザーラ様の動きが止まったように感じたが、すぐに私の顔を覗き込んで笑ってくれた。
「そうか。一緒だな」
そう言って私の頬を撫でてくれる。
その温かさが嘘をつけなくした。
「でも、一緒にはいられない。あなたたちを傷付けたくないんです。このままいたら私は本当の意味で自分じゃなくなって皆さんを傷付ける。自分の身を滅ぼしてでも。だから……」
その言葉を遮るように私の唇は塞がれた。
「言ったろ、お前を守るって。それに俺たちは簡単に滅ぼされたりしないし、ティーナを滅ぼしたりなどさせない。信じてくれ。ティーナ。愛する男を、信じてくれ」
バル様の力は偉大だ。
でもなぜかザーラ様なら何とかしてくれると思ってしまった。
そのまま私たちは口づけをした。
吐息が混じって甘くなっていく口づけを何度も。
「ザーラ様……」
ザーラ様は私を抱き、ベッドに運んだ。
その上に重なるザーラ様はとても愛おしくて、綺麗だった。
そのまま唇が降りてきてまた口づけをする。
私の服も少しずつ乱れ、ザーラ様が上着を脱いだ時だった。
左肩に紋章があるのを見つけたのは。
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