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今から十六年前。
この城は何者かに襲われて損害を受けた。
中でも一番の傷だったのはもともと所有していた七色の力だった。
七色の力は一色ずつに割り振られた力のこと。
その中の六つがなくなってしまった。
その時は人に被害は出なかったと記されている。
でも不思議なことに五つの力は失われた詳細が書いてあるのに対し、残りの一つが書かれていない。
人に危害が加わったのか、それとも城に隠されているのか、ミスとは思えない。
そして王は王子の一人だけに力を渡すことにした。
それがザーラ王子。
妾の子には渡さないだろうという裏をかいた作戦のようなものだった。
そこまで話してザーラ様は自分の紋章に手を当てる。
「父様は言ったんだ。お前は誰よりも強くなる。だから渡した。これは口外してはいけないよと。だから嫁になるものもいないと思った。でも父様はティーナを託してくれた」
そう言いながら私の手をとり紋章に私の手をかざす。
そこからは温かい光のようなものが伝わってくる。
「何か感じるか?」
「温かいです。力が伝わってくるような感覚」
ザーラ様は納得したような顔をして私の手を離した。
でも私にはその話を聞けばおのずと違和感を抱き始める。
一族の話とは違うということだ。
今更一族を信じようとは思わない。
ということは私たちは利用されている。
ならば母の命は今も本当に無事なのだろうか。
「ザーラ様、本当にその話が真実なら私たちはこの後、一族に……」
「そんなことはさせない」
ザーラ様はきっぱりと言い切り、私を抱きしめた。
紋章が当たっている肌からはまだ力が伝わってくる。
自分の胸の中にもそれが届くような気分だ。
「母は必ず探して見せよう。それにまだやらなければいけないことがある」
「やらなければならないこと?」
「ああ、俺は確信した。だからあとは解決口を探すだけだ。それも目星はついている。今頃……」
ふと不自然に会話を止めると、私のことをじっと見てきた。
さっきまで殺すか助かるかの緊迫した場にいたのに、もう心は恋の心に戻っていた。
「それよりも今日がゆっくりできる最後だ」
「え?」
「俺たちは明日父様にティーナの心がはっきりしたことを伝える。そして嫁にもらう覚悟があることも。そうなればゆっくりはしていられない。そもそも父様はゆっくりさせるつもりはないだろう。三日後の舞踏会によって披露することを目的にしているだろうからな」
急な展開に頭は追い付かない。
でも、私でいいのだろうかと不安な気持ちが襲う。
私は身元を洗われたら一緒にいるにふさわしくない。
そんな私の不安を見透かしたようにザーラ様は笑って頭を撫でた。
「ティーナのことは何としても守る。身元がなんと言われようと俺が愛した人だ。恋愛結婚を謳っているこの国に反対なんてさせない」
そしてザーラ様は私をベッドに押し倒した。
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