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決戦の夜
私がザーラ様と添い遂げたいと申し出ると話は早かった。
ザーラ様から聞いていた通り、舞踏会が開かれる話だった。
そしてその際にアーリス族も私の出身族として招かれるという。
これに関してもザーラ様は動揺をしている様子を見せなかった。
むしろ何か挑むような体制だった。
舞踏会の日取りが決まってからは忙しく、私はドレスの採寸やマナーの講座。
ザーラ様達は何かと忙しくしているらしい。
合間を縫って会いに来てくれる時は、必ず「守るから」と安心をくれる。
首飾りがあるからかバル様が現れることもなく、人を傷つけることもなかった。
でも私は気がかりだった。
力を奪った一族の出身になってしまう。
この一大事がわかったらザーラ様と一緒にいられないのではないかと。
その不安を拭うために星空の下を歩いたり、昔の記事を読んだりしているのだが、解決策は見つからない。
せめて母を救い、出身ではなくさらわれたと分かればいいのだが。
「ティーナ。いるか?」
不意に部屋に響いたザーラ様の声。
私は飛び跳ねるようにその場を駆けて扉に向かった。
「はい。どうされました?」
「よかった。中に入ってもいいか」
「はい。もちろんです」
ザーラ様を部屋に入れると不安だった心が一気に安心に包まれる。
「ティーナ。舞踏会が急遽明日になった」
「え? 明後日じゃ?」
「この方が都合がいいんだ。こちらだけが準備できているからな」
納得したように頷くが王子たちが何をしているかを私は知らない。
頷くことはできるが力にはなれないのだ。
「ティーナ。明日全てが決まる。だから、お前に最後に確認しておきたいんだ」
すると、ザーラ様がこちらに向き直り、しっかりと見据えてくる。
固唾をのんでその顔を見つめ返すと、口が開かれた。
「全てを知る覚悟はあるか。それが今までを覆す真実だとしても」
その時、一瞬の迷いが生じた。
私には知らないものがたくさんある。
そしてこの問いは私には想像のつかない真実が隠されている。
怖いという言葉がないわけじゃない。
でも私の答えは一つだった。
偽りのない言葉で伝えるならこれしかない。
「私は、ザーラ様を愛しています。あなた様と一緒にいられるなら何が覆っても構いません。私はあなたと一緒にいたい。私を受け入れると言ってくれたあなたと」
その言葉を聞いてザーラ様は微笑んで私を抱きしめた。
「お前がそれでいてくれてよかった」
そして明日に向けて身構えるのだった。
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