決戦の夜

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舞踏会の会場に足を踏み入れると息がつまるほどの緊迫感と恐怖感があった。 背中を冷たいものが通る感覚すらある。 なぜならそこにいたのはアーリス族と王族。 いてはならない、まみえてはいけない関係がそこにあったのだ。 「ザーラよ。話したいこととはなんだ」 王様も戸惑いを隠せないようで出てきたザーラにすぐさま質疑をする。 私も繋がれた手を強く握りしめた。 すると「大丈夫」というように強く握り返された。 「まずはティーナを育ててくださったアーリス族に一言言わせていただくのが筋かと思いまして。それからティーナに誓いを立てる前にやることがあるのです」 王様はひげを触りながら意味を探すようにザーラを見ていた。 「誓いは後日、婚姻の儀の際に立てるであろう。なぜ今、この一族と?」 王様は国を治める方だ。 何かあることに気づいているに違いない。 それでもザーラは動揺一つしないで私の前に立った。 その手には一つの手鏡が持たれている。 その手鏡を見た瞬間、王族の顔色が変わった。 「あれは! 国に伝わる……」 「少しお待ちください。これから真実をお見せします」 真実。 そう私は偽り。 ザーラはそれを示そうとしているの? 「ティーナ、これを覗いてほしい」 でもザーラの顔に曇りはない。 むしろ晴れ晴れとしている。 その裏で私の心には不安しかない。 曇った感情がこの場に移りそうなほど。 「大丈夫。俺を信じて。必ず救うから」 その言葉でやっと我に返る。 ザーラは私と共になることを択んでくれた。 殺されかけても信じてくれた。 なら私も信じたい。 ザーラの言う通り手鏡を手に持ち覗き込むと首飾りを外した胸元からピンク色の光が光っている。 「おお、これは……」 私がその光に驚いているとザーラがその手鏡を持って自分の肩にあてる。 すると緑色の光が放たれていた。 「これは王族に伝わる力の証。そして君の本当の名は」 その時アーリス族が動こうとした。 でも一瞬だった。 彼が言葉を紡いだのは。 「リナティーナ」 その瞬間、全てが終わり全てが始まった。
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