エンドレス・ロード・ヒューマン

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西暦2024年4月21日 午前24:00:00 東京の秋葉原、新宿、池袋周辺で人間に脅威を与えるか与えないのかの賛否両論のゲームが遂に大々的に発売された。 その問題のゲームの名前はエンドレス・ロード・ヒューマン。 人間に対して何故脅威なのか。 その全てのゲーム概要。 それは.....亡くなってしまった人にAIなどを駆使してVRMMORPGを駆使してまたそのまま会えるという途轍もないゲームだった。 だがそのゲームに関して脳科学者は提唱する。 このゲームは脳に大きなショックを与えてしまうだろうと。 心理学者は提唱する。 このゲームは人の悲しみを乗り越えられない。心にダメージを与えてしまう。 と、である。 専門家の間では意見がかなり分かれる結果となった。 1年以上の議論、賛否両論などの末。 ゲームは発売された。 そのゲームは果たして悪か。 それとも正義か。 ゲーム自体はアメリカと日本のゲーム企業が共同で制作してスーパーコンピューターなどを駆使して造られたゲームだった。 だがそんなこのゲームに対して。 最大の望みを賭ける者達が日本にも世界中にも居た。 悲しみを乗り越えられない人達だ。 その者達は皆。 エンドレス・ロード・ヒューマンを最後に言えなかった言葉の別れに使いたいとβテスターの時に応募が殺到したりした。 その数は100人のテスターのうち。 応募者10万人以上と。 過去のゲーム市場ではあり得ない数値となった。 「エンドレス・ロード・ヒューマン.....」 既にゲーム発売から1週間が経過したある日。 ゲーム屋の壁に貼られたゲームの価格を見つつ戸惑いながらも少女は思う。 街中で見たエンドレス・ロード・ヒューマンへの反対広告。 だがそれでも。 学校があって間に合わず。 最後の別れを言えなかった母親の事を。 少女の名は長島泉(ながしません)。 17歳の高校生だ。 黒髪の母親譲りの髪の毛が特徴的な女の子である。 ゲーム価格は税込で10万円だった。 10万円は少女にとってはかなり重い数字である。 だがそれでも少女は。 会いたかった。 母親に、である。 最後の別れを言いたかったのだ。 10万円はお小遣いとお年玉で買える可能性はあった。 だが今は父娘家庭。 どうしたものか、と少女は悩んでいた。 そして少女は決断する。 それでも思い出に変えられない、と。 それから少女はゲームを購入した。 そして家に帰る.....と。 「何をしていたんだお前は」 「.....お父さん.....」 「家に帰ったら勉強するんだ。.....そんな寄り道などしている場合か!」 泉の父親は厳しく咎める。 母親が亡くなり厳しくなってしまった父親を悲しげに見る泉。 そして泉はそれを取り出す。 エンドレス・ロード・ヒューマンを。 それから父親に指し示す。 「.....お父さん。変わってしまった人格を.....お母さんとの出会いで全てを取り戻して」 「.....何を言っているんだお前は!」 「私はお父さんの性格が変わってしまった事を.....後悔している」 「後悔?意味の分からない事を!」 「.....エンドレス・ロード・ヒューマンはその為にあるんだよ」 無駄遣いを.....、と言う父親は。 そのまま玄関を開けて、仕事に行く!、と去って行った。 それから残された泉は。 涙を拭いながらエンドレス・ロード・ヒューマンを開ける。 そこには......頭に乗せる為のヘッドギアがあった。 充電式である。 「これを.....えっと.....」 暫く泉は説明書を読み。 そしてヘッドギアを待ち切れず被り。 リンク!、と言いながら泉はそのまま脳波でリンクした。 真っ白な部屋が見える。 それから泉は周りを見渡すと。 『ようこそ。エンドレス・ロード・ヒューマンへ』 AIの目も鼻もない大きな顔が手を広げて案内する。 そして泉を大きな輪っかが通る。 それから泉は驚いた。 そこには.....制服から日常の服装になった泉が居たから。 差し出された鏡を見るとその様になっている。 『エンドレス・ロード・ヒューマンではこの世界の全てをAIが管理します。個人の意思を尊重します。その為にアバターなどは存在致しません。が。アバターをお望みであれば途中で変える事も可能であります。仰って下さい。全ては貴女の為に。祝福を』 そして泉は光に包まれ。 目の前を見ると.....中世ヨーロッパの様な建築物が沢山見えた。 そしてもっと目を細めると。 人混みの中に見知った顔があった。 それは.....亡くなった母親だ。 「.....嘘.....」 「泉。久々ね」 「お、お母さん.....」 泉は待ち切れずにそのまま思いっきり駆け出す。 小学校で徒競走で走ったぐらいに。 それから涙を流して母親に抱きついた。 癌で亡くなった母親に。 母親の匂い、母親の感触を確かめながら。 泉がはたと気が付くと人混みは居なくなっていた。 2人を幸せで包む様に。 「.....お母さん.....」 「何?泉」 「.....ゴメン。何も言えない.....嬉しすぎて」 「そう?.....私は貴女にまた出会えて良かったわ。貴女が.....お腹を痛めて産んだ子供だって事を.....また実感したのだからね」 「お母さん.....」 「このゲームは仮想空間よ。.....でも貴女との思い出は仮想ではないわ。ちゃんと現にこうして喋れているから」 涙を浮かべる泉。 果たしてエンドレス・ロード・ヒューマンは悪か。 それとも正義か。 その賛否を泉は考える。 だけど.....それでも。 再会したのは間違いないのだから、と泉は思った。
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