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1.うぜぇ夜明け
終電が終わり、そして始発が始まるまでの繁華街は実にカオスだ。
泥酔し、道路に寝そべる大学生。
飲みの〆に食べたラーメンを吐き戻すサラリーマン。
あちらこちらで勃発する喧嘩。
……そして路地裏でホストにカッターナイフを突きつける地雷系女子。
「ねぇぇ…、純恋くん…、樹莉亜の何がダメなの…?こんなに純恋くんのこと愛してるのにぃ……」
「じゅ…樹莉ちゃん落ち着こ!ね?…こんなとこ誰かに見られたら、通報されちゃうよ!」
興奮して泣きじゃくる樹莉亜を、純恋は必死に説得していた。
樹莉亜は震える両手でカッターを握りしめ、その先端を純恋に真っ直ぐ向けている。
折れてしまいそうなほど細くて白いその両腕には、痛々しいリスカの跡がびっしりと刻まれていた。
「じゃぁ、じゃぁ樹莉亜のこと今すぐ抱いてよぉ…。通報されるの嫌だったら抱いて!」
「ダメだよ!樹莉ちゃん彼氏いるんでしょ!?どうしてそんなこと言うの?!」
「だって、だって、彼氏は樹莉亜のこと愛してないもん!絶対浮気してるよ!だから樹莉亜も純恋くんと浮気するの!!」
大きな目からポロポロと大粒の涙を流し、樹莉亜は不規則に呼吸を荒くした。
ヒュー、ヒューっと掠れた息の音が、小さな唇から漏れて今にも過呼吸を起こしてしまいそうだ。
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