初恋 〜あの頃の時間(とき)〜

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それを指で押し上げて、正常な位置に戻す。 この動作を日に何度もするので、皆んなは陰で「いいかげん、買えよ!」とツッコミを入れている。 「では先生を紹介します。守山先生、入ってください」 廊下で待機していた男性が、少し緊張の面持ちで、教室に入ってきた。 「自己紹介をお願いします」 小宮山に促され、男性は「はい」と云った。 「皆さん初めまして。守山建人といいます。33歳、英語の楽しさを、皆さんに知ってもらえたら、そう思っています。大学を卒業後、事情があって直ぐに教職につくことが出来ませんでした。今回が教師としてのスタートとなります。よろしくお願いします」 守山先生は、そう云ってお辞儀をした。 皆んなは拍手をした。            確かにイケメンだ。 クラスの数名は既に何かを企む目になっている。 「感じいいね」と、茜。 「うん、そうだね。真面目そうな先生に見えた」 《守山先生は人気者になりそうだな》 私はそう思った。 そして同時に妙な親しみを持った。 理由は分からないけど。 でも、懐かしい気持ちになっている。 初めて見る先生なのに、不思議。
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