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「ありません」と即答。わたしはペーパードライバーなので上司が車を運転する。シートベルト締めろよ、と言われても、そんな。車なんか全然乗らないわたしには分かりません。
ち、と上司は舌打ちをし、
「こっちだよ。……ほらよ」ずいっ、と上司がすさまじく近くに来てさーっとシートベルト締めてくれるってどんなイケメンだ。これで、性格がよかったらなぁ……シチュエーションが違ったらなぁ。ああ……勿体ない。
『有菜。……ちょっと、目ぇつぶってて』
『え。なになに』期待してわたしは目を閉じるのだ。すると、ほっぺを滑る、指の感触。『ほら……』目の前に、天使のようなイケメンが、『ほっぺにクリームついていた』――おい。
「こら」これが上司の声だと気づくのに三秒を要した。目を開いたわたしは、「ん。口閉じて」エッ。この上司いったいなに言ってんの!?
バチ〇ソ整った顔が近づいてくる……きゃっ。いけない……いけません、わたしとあなたってそんな間柄じゃな――
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