◇01. 上司は、残念なイケメン

1/9
前へ
/81ページ
次へ

◇01. 上司は、残念なイケメン

「おぉーいこの電話メモ置いたの誰だっ」  フロア中に響く大声。……んな大きな声出さなくたって聞こえてますよ。はいはい。 「わたしでーす」 「……またおまえか」ち、と上司は舌打ちをし、「N社には鈴木さんがおふたりいらっしゃるんだ。N社の鈴木さんと聞いたら下の名を聞けと前にも言っただろう。なんでまた間違えた」  しれっと答える。「……先方が名乗りませんでしたので」 「名乗らんからって……クソ。ああ、もう、いい。……電話の取次ぎもまともに出来んやつに仕事が出来るか。雑務を雑務だと思っているからやらかすんだ。プロ意識が足りん」  ……そう言われても。「まだわたし、入社して六日目ですが」 「言い訳をするな」またも、舌打ち。イライラするとこうするのね昭和の男って。そして彼は素早く固定電話の番号を押し(話しかけて置いて急に無視すんな)、「……ラブメイク株式会社の名取(なとり)です。……先ほど営業部の鈴木様からお電話を頂いたのですが……あ、すみません、鈴木英二(えいじ)さまでしたね。ありがとうございます」だから。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

469人が本棚に入れています
本棚に追加