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◇01. 上司は、残念なイケメン
「おぉーいこの電話メモ置いたの誰だっ」
フロア中に響く大声。……んな大きな声出さなくたって聞こえてますよ。はいはい。
「わたしでーす」
「……またおまえか」ち、と上司は舌打ちをし、「N社には鈴木さんがおふたりいらっしゃるんだ。N社の鈴木さんと聞いたら下の名を聞けと前にも言っただろう。なんでまた間違えた」
しれっと答える。「……先方が名乗りませんでしたので」
「名乗らんからって……クソ。ああ、もう、いい。……電話の取次ぎもまともに出来んやつに仕事が出来るか。雑務を雑務だと思っているからやらかすんだ。プロ意識が足りん」
……そう言われても。「まだわたし、入社して六日目ですが」
「言い訳をするな」またも、舌打ち。イライラするとこうするのね昭和の男って。そして彼は素早く固定電話の番号を押し(話しかけて置いて急に無視すんな)、「……ラブメイク株式会社の名取です。……先ほど営業部の鈴木様からお電話を頂いたのですが……あ、すみません、鈴木英二さまでしたね。ありがとうございます」だから。
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