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第二章 中学生
私達は中学生になった。
祝いで海斗と一緒に白い砂浜に行った。
白い砂浜はとても綺麗で、まるでおとぎ話に出てくるような砂浜のようにも見えた。海は夕日をうつしていて綺麗。見惚れていると、海斗が手を差し出してきた。
「少し歩こうぜ」
私は海斗の手を握って少しゆっくりと歩いていく。とてもとても長く感じる時間。
私は海斗の横顔を見た。海斗は太陽に照らされていて、とても美しくかっこよく見えた。
私は、ここで確信した。
『海斗のことが好き』だということに。
私は顔を見られたくなくて俯いて、手を強く握りしめた。海斗は何も言わずに歩き続けている。私も足を止めることなく歩き続けた。足が疲れるまで、歩き続ける。
向こうの岩場にたどり着いて、私は手を離して後ろを振り返った。そこには私と海斗の足跡ができていた。
なんだか、心がうるさく聞こえる。とても幸せでこの幸せがずっと続けばいいのにとさえ思ってしまう。
なんて身勝手な恋心なのだろう。私は目を伏せて考えて首を横に振った。
あの夢を思い出すのはよくない。
指名手配にもなった男の顔が夢に出てきたなんて。
泣きながら、私に何度も何度も好きといってきて、首を絞めてくる人なんて。
それなのに、なんでこんなに悲しいと思うのだろう、なんで怖いと感じてしまうのだろう。
「梅」
海斗が真剣な声で私に言ってきた。私は顔を上げて、海斗の方を見ると、海斗の顔が近かった。
一瞬息が止まった。
唇が重なって、10秒たたずに離れると海斗が頬を赤く染めながら言った。
「好きだ」
海斗が私のことを好きだと言ってくれた。
私も海斗が好き、そういえばよかったのに。
「……梅さん?」
男の低い声が聞こえてきた。私達は振り返ってその人を見た。その人の顔は全く見覚えなが無かった。
ボサボサの白髪に、やつれた顔、ボロボロの服。まるでホームレスのような格好だった。
「誰、ですか?」
問いかけると、男は一歩私に近づいてきた。
「梅さん」
「や、やめてください」
「おい、くるんじゃねーよ」
海斗が庇うように出てきてくれた。私は、嬉しかったけれど、怖かった。海斗がまた死ぬんじゃないかって。
「生きてた、生きてたんですね! 梅さん、ああ、よかった。梅さん、僕は殺してなんかいなかった。あれは夢だった!」
何を言っているのだろう。私は冷や汗がどっと出てきて固まっていた。
「家に帰りましょう」
海斗は私の手を握って走り出した。私が後ろを見ると、その男は、泣いているようだった。
その泣いている姿をみて、なぜか悲しくなった。
その場所から離れて、警察にいき事情を説明するとすぐさま、先ほどの海のところに行ってくれていた。
大人になりきれていない子供のような彼は捕まるのだろうか。
そこが不安だった。
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