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6 初めましてのハズがない!
そして困惑の王子様が、
『初めまして』
などという、とんでもない事を言う前に浅いカーテシーの体を取り王子に聞こえるように、
「殿下、イリア・レージュで御座います」
と微笑みながら挨拶をする公爵令嬢。
『マジか?!』
王子はハッとした後で、その囁きに頷くと
「レージュ公爵令嬢、長い間婚約者選定の試験を受けてくれて本当にお疲れ様」
とまあ、心の中では慌てているが表情に出さずに王子様スマイルを披露した。
周りの御令嬢が、小さく溜息を付きながら顔を薄っすら赤くしたのは想定内の出来事だ。
だってイケメンだからね。
一方王子はそう言いつつも、公爵令嬢をじっと見つめて話す声と仕草を具に観察する。
『しかし、こんなに化粧一つ髪型一つで変わって見えるものなのか・・・』
美しく見える周りの御令嬢達の顔も、ひょっとすると・・・ と考えて、初夜で素顔になった妻に向かって思わず
『どちら様?!』
と言ってしまう自分を一瞬想像し、遠い目をしてしまった王子様であるのだが、今は目の前に佇む銀髪の美少女が果たして自分の婚約者として内定している公爵令嬢なのかを見極めなければいけないのだ。
だって偽物だったりしたらエライコッチャであるからして・・・
確かに今迄とは違う顔と服装に見えるが、特徴のある虹のようなプリズムを湛えた銀色に輝く髪の色と菫のような瞳は確かにレージュ公爵令嬢と全く同じ色だ。
そもそも公爵がエスコートしてこの広間に入場したのだから、彼の愛娘のイリス嬢で間違いは無いはずだ。
王子の視線が自分に注がれているのに気づき、ふんわりと微笑むイリス。
「・・・ッ!」
王子の顔が薄っすらと朱色に染まったのに誰も気が付かなかった。
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