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 絢斗はカメラをかまえた。一、二歩志から距離を取り、一心にペンギンを見上げる彼の姿を撮る。  横顔のアップ。バストショット。もう三歩下がると、ギターケースを背負い、パーカーのポケットに両手を突っ込む全身の写真を撮影した。 構図を変えて、志とペンギンが見つめ合っているような写真も撮った。被写体に人を選んだことはこれまでなかったけれど、こんなにも絵になるものかと感心した。  僕とは、全然違う――。  くたびれて色の()せたジーンズに、ジャストサイズのカーキのフーディーを着ているだけ。髪を染めたこともなく、生まれつき色素の薄い猫っ毛はいつもペタンと頭にくっついてボリュームがない。  オシャレとは無縁で、顔もスタイルも平々凡々。自分と比べて、志はなんと鮮やかな存在だろうと心底思う。かっこいいという言葉では言い尽くせない魅力を彼から感じてやまないのは、いったいどういうわけなのか。  そこまで思って、ハッとした。  気がつけば、幻想的なペンギンの存在を忘れて志ばかりを見ていた。わけもわからずドキドキして、頭が少し混乱した。  絢斗が離れたことにようやく気づいた志が、驚いた顔で駆け寄ってきた。 「ごめん、次行く?」  志の声で我に返った。絢斗は首を横に振り、撮りたての写真をカメラの液晶画面に表示させ、志に見せた。
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