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絢斗は〈ごめんなさい〉と手話で伝えた。親指と人差し指で眉間をつまむような仕草をし、指先を揃えて開いた手を上から下へと下ろしながら、同時に頭も下げる。
最後の動きは〈よろしくお願いします〉と似ているが、最初が違うので志にも別の手話だとわかったらしい。絢斗の表情から謝罪であると察してくれたようで、志は首を横に振った。
「ありがとう。迷惑なんかじゃないよ」
駅でしてくれたのと同じように、志は絢斗の頭をなでた。恥ずかしくなって頬が赤らむのを感じたけれど、心はほかほかとあたたまった。
「むしろ嬉しいよ、こんな風に撮ってもらえて。ねぇ、この写真、俺にもちょうだい」
志はパーカーのポケットからスマートフォンを取り出した。絢斗は快諾し、カメラとスマートフォンをBluetoothで接続して写真を転送した。
ありがとう、と言った志は、スマートフォンを握った右手で忙しなく画面をタップした。文字を打ち込んでいるらしい。
やがて顔を上げると、志は液晶画面を絢斗に見せた。
「じゃーん」
志が操作していたのはインスタグラムだった。志の全身とペンギンを横から撮った写真に、コメントをつけて投稿されていた。
〈友達が撮ってくれました! Thank you, Ayato! 〉
インスタ映え~、と志は鼻歌まじりに笑った。その声を半ば聞き流した絢斗の目は、志の綴った文章に釘づけになっていた。
友達。
なにげなく打ち込まれた文字を、吸い寄せられるように見つめる。
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