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絢斗は青いノートとシャープペンを取り出し、志に伝えたいことを書き記して見せた。
〈どこか、座れる場所へ移動したいです〉
「えっ、大丈夫? 気分が悪い?」
絢斗は首を横に振り、ノートに新しい一文を記した。
〈やりたいことがあります〉
「やりたいこと?」
絢斗ははっきりとうなずいた。志は突然のことに戸惑っているようだったが、絢斗の要望を聞き入れ、ペンギンのブースから少し離れた通路で見つけたベンチに並んで腰かけた。「ここでいい?」と確認され、絢斗は右手でオーケーサインを作った。
青いノートをバッグにしまい、今度は赤い表紙のリングノートを取り出す。揃えた足の上にノートを置き、絢斗はゆっくりとペンを走らせ始めた。
ページの一番上に、『The light fall(仮)』と記す。罫線を無視し、次々と単語を書き出していく。
空。光。太陽。輝き。きらめき。幻想的。非日常。ペンギン。泳ぐ。寄り添う。出会う。くっつく。離れる。孤独。海。青。
マインドマップのように、単語から単語を連想して線でつなげていったり、それぞれ独立したものをいくつも書き並べたり。
絢斗は夢中で作業を続けた。隣に座る志が覗き見していることなど、さっぱり気に留めていない。
満足すると、今度は書き出したワードを短い文章にし始めた。
小説のようなそれではない。詩だ。メロディーをつければ歌詞になるような。
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