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「これ、歌詞?」  志が問う。絢斗は曖昧に首を振った。  歌詞のつもりで書いたわけではないけれど、詩を書き始めたのは例の楽曲に影響されたからだ。音楽は作れないが、もしも歌にするならAメロはこうで、サビはどうで……といった風に、一つの曲としての構成を考えながら綴ることはある。  今回もどちらかというとそういう書き方になった。志がギターを背負っていたからだろうなと絢斗はひそかに思った。 「ここがサビ?」  志がノートの中央あたりを指で示す。まさに絢斗がサビを想定して書いた部分だった。右手でオーケーサインを作ってみせる。 「じゃあ、他はこうなるね」  志が右手を広げて差し出してきたので、絢斗は彼の手のひらの上にシャープペンを載せた。  志はペンを握り、Aメロ、Bメロ、サビと、絢斗の書いた詩をいくつかにブロック分けし始めた。そのうち「ここにちょっと長めの間奏入れたいなぁ」なんて言葉が聞こえてきて、絢斗の胸が弾み出す。  まさか、彼はこの詩に曲をつけるつもりなのか。  無意識のうちに生唾を飲み込む。わけもなくドキドキしてきて、頬が熱を帯びていく。
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