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 勢いにまかせ、絢斗は新たな一文を綴った。 〈志さんの声も、すごく素敵です。きれいで、耳に自然となじむというか〉 「ほんと? 嬉しいな」 〈歌もお上手ですし、ずっと聴いていたくなります〉  運命的な出会い、というものがもしもこの世にあるのなら、さっき水族館で聴いた志の歌声はまさにそれだと絢斗は感じた。  歌のうまい人なんてごまんといる。けれど、志の歌はその人たちとは少し違った。 『うまい』という言葉で他の歌い手と一括(くく)りにしようとすると、なぜか胸がモヤモヤした。確かに志もうまいのだけれど、ただうまいだけではなくて。  なんと言えばいいのだろう。  そう……好きだ。  志の歌声が好き。歌い方が好き。  自分の紡いだ詩を歌にしてくれたからじゃない。純粋に、志の声が好きなのだ。話す声も、歌う声も。だから彼の歌だけが特別に思えて、もっと聴かせてほしいと願ってしまう。 「じゃあさ」  志はギターを提げて立ち上がると、スマートフォンを操作し、絢斗に手渡した。 「よかったら、これ聴いて待ってて。俺、ちょっと練習してくるから」  受け取ったスマートフォンは、YouTubeを開いた状態になっていた。『Yuki1092』というアカウントのチャンネルにアクセスされていて、二十件以上の投稿動画がずらりと軒を連ねていた。 「俺の歌。全部カバーだけど、そんなんでよければいくらでも聴いて」
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