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 低い音から高い音へと駆け上がるように奏でられたイントロは、壮大な物語のプロローグを思わせた。しかし次の瞬間には、ギターで弾き語りをする時と同じポップな弾き方に変わる。メリハリのあるピアノ演奏と高らかで伸びやかな歌声は、視聴者を一気にYuki1092の描き出す音楽の世界へと引きずり込んだ。  一番だけを歌った『きみの好きなもの』が終わると、途切れることのない圧巻のピアノが、いよいよ新曲『スウィーテスト・シンフォニー』のイントロを奏でる。二曲とも長調だが、シャープの数が増える『スウィーテスト・シンフォニー』は、より人々の感情に訴えかける曲調に仕上げられていた。  叙情的なイントロが終わる。志はその顔に心を映し、絢斗の綴った(うた)を歌い始めた。  赤く色づく季節の中で  道端にコイン 見つけたように  僕らの出会いは偶然だった  惹かれ合ったのはなぜだろう  手をつなぐことさえも  はじめは恥ずかしくてぎこちなかった  今ではもう 互いの胸の音  誰よりも近くで聴けるようになったね  重なり合う 僕らの未来  同じ空の下 どこまでも二人で  紡いでいこう 僕らの交響曲(シンフォニー)  世界を愛の()で満たして 「永遠って信じる?」ときみは訊き 「信じれば叶うよ」と僕は答えた 「そうだね」ときみは笑って 「あの星に誓おう」と僕は夜空を指さした  限られた時間の中で  あと何度 きみに伝えられるだろう 「いつか胸の鼓動が()んだとしても 僕はきみだけを愛し続けるよ」と  走り出した 僕らの未来  きみと二人なら どこまでも行ける  奏でていこう 僕らの交響曲(シンフォニー)  かけがえのない一瞬(いま)をともに生きよう
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