10.

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「どっちでもいい、という答えではダメでしょうか」 「はぁ?」  志に睨まれる。絢斗は穏やかに笑った。 「志さんが作る曲なら、僕、どんなものでも好きになれます」  肌に合うのだ。そもそも志の歌声に惚れ込んだから、志がのびのびと歌える、歌いやすい曲を自分で作って歌えば、彼の歌声をさらに好きになれることは疑いようがない。  せっかくほめたのに、志は険しい表情でため息をついた。 「おまえに意見を求めた俺がバカだった」 「ですが、僕の意見、イコール、Yuki1092のファン代表としての意見ですからね。真摯に耳を傾けるべきだと思います」  志はいよいよ不機嫌になり、絢斗にぐっと顔を寄せた。 「ようやく上手にしゃべれるようになったと思ったら、途端に口が達者になるんだな」 「志さんが相手でなければ、こんなに饒舌にはなれませんよ」  ゆったりと話すせいで緩い愛情表現に聞こえてしまうことが非常に惜しいが、絢斗なりに、志の前だから素の自分を出せるのだと伝えたかった。池袋で出会った時から見せてくれていた志の勘の良さを信じて紡いだ言葉だった。  志はわずかに頬を赤らめ、絢斗の手の中からコーヒーの入ったマグカップをそっと抜き取り、自分のものと並べてテーブルに置いた。 「出会った頃から思ってたけど」  言うなり、志は絢斗の上半身をベッドの上に押しつけた。 「えっ……?」 「おまえって、ちょっと小生意気なとこあるよな」  両足を持ち上げられ、ベッドの上に寝かされる。 「そういうとこ、嫌いじゃない」  志は絢斗の上に馬乗りになると、目を閉じ、唇を重ねてきた。
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