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☆
容赦なく、大きく食まれる。突然の行為に驚きつつ、絢斗は志の求めに従順になった。
志の右手が頭の下に入り込み、絢斗の後頭部を包む。髪を梳くようにすべる指から伝わる熱が心地いい。
唇がピリピリと痺れ出す。志の舌が絢斗の歯の隙間をこじ開け、ブラックコーヒーの苦味とともに口内へ進入してきた。
くるくると、二枚の舌が絡まり合う。絢斗の味を確かめるように、志の舌が口腔をくまなく這い始める。トーストの上でじわりと溶けるバターのようになめらかにすべる志の感触は、絶妙な甘さを口いっぱいに広げていく。
舌先が上顎に触れた時、びくん、とからだが反応した。下半身に妙な疼きを感じ、無意識のうちに腰が動く。
志の右手が、羽織っていた白いセーターの裾から入り込み、素肌に触れた。どんどん胸のほうへと上がってきて、左の乳首をつままれた。
「んん……!?」
唇を塞がれたまま、絢斗は喉から声を出して身をよじった。
「逃げんな」
からだを横向きにしようとした絢斗を、志は冷静に追いかけてくる。乳頭を指でいじくられ、耳を甘噛みされた。
「はぅ……! ゆ、ゆ……いや……っ」
「どうした?」
いつもより低く出した志の声は男らしい色気に満ち、耳の中をくすぐる吐息が絢斗の背中を粟立たせる。
「顔、真っ赤だけど」
「だっ、て……ゆ、ゆー、志、さん……!」
「なに? もっと?」
「ち、ちが、ちが……!?」
服の中から腕を抜いた志は、きゅっと唇を押し当てるようにキスをすると、絢斗の上半身から衣類をすべて剥ぎ取った。
切れ長な瞳が意地悪く細められる。志は勢いよくキスの雨を降らせながら、デコルテラインを指でなぞり、再び乳首をつまんできた。
「……!」
唇で口を塞がれ、うまく声が出せない。左手で肩を押さえられ、右手は左の乳頭をくりくりといじり続けてくる。
呼吸が乱れる。下半身がムズムズして、足の指先が震えた。いいように弄ばれているからだは火照り、みるみるうちに汗ばんでいく。
「絢斗」
唇を離れた志の口は、首筋にきゅぅっと吸いついてくる。搾り取られるように強く印を残され、絢斗は声を上げることを押さえられなかった。
「好きだ、絢斗」
デコルテを舌先でなめられる。絢斗を隅々まで味わい尽くすように、志は何度も何度も絢斗のからだにキスをした。
乳首に吸いつき、かじられる。「あぁっ」と絢斗の嬌声が部屋じゅうに響く。
痛いのに、気持ちよくてたまらなくて、戸惑いを隠せない。同性を相手にこんなにも感じている自分はいったい、頭のネジが何本はずれているのだろうと思う。
それでも求めてしまうのだから、だんだんどうでもよくなってきた。理屈よりも、志がほしい。志に求められたい。理性なんて取っ払って、すべてを、志に。
乳首に飽きた志の口が、贅肉も筋肉もついていない絢斗の腹を上から順に愛撫していく。舌でなめたり、吸いついたり。好き放題やった先で、志の右手が絢斗のズボンのベルトとホックをはずした。
下半身まで脱がされて、素っ裸にされる。知らないうちに、性器がパンパンに膨れ上がっていた。
「かわいい」
志の、ピアニストの指先が、絢斗のからだを愛でるようになでていく。
「たまんねぇな。なんでこんなにかわいいんだよ、おまえ」
志の顔が赤らんでいる。感情が弾ける一歩手前に彼は立っているようだった。
「好きだ、絢斗。おまえの全部が好き。くりっくりの目も、恥じらってる顔も、全部」
きゅっと形よく締まった志の口が、迷いなくそれを咥えた。「ひぃっ」と絢斗は顔を真っ赤にして、されるがまま、志の行為に身をゆだねることしかできなかった。
くちゅくちゅと卑猥な音が耳に届く。けれど嫌な感じはまったくせず、そこにあるのはただただ快感だけだった。
気持ちいい。志の口の中で動くものが独(ひと)りでにびくびくと興奮し、感情が高ぶって呼吸が乱れる。
「……ぁ、っ……ゆ、志、さん……!」
手で口を押さえなければ、見境なく悲鳴を上げてしまいそうだった。高揚した心が吐息を弾ませ、全身から汗が噴き出す。
ダメだ。もう、我慢できない――。
どんどん激しくなる志の口の動きに合わせ、絢斗はうめき声を上げながら果てた。志の口の中で。
「あかん」
絢斗の蜜をきれいに飲み干した志が、これまで見たことのないとろとろの顔をしてつぶやいた。
「かわいすぎるやろ、城田絢斗」
関西訛りが出てしまっていることを気にする様子もなく、志は自身も服をすべて脱ぎ捨て、絢斗が背中で下敷きにしていた掛け布団を床へと派手に払い落とした。
「もらうぞ、おまえの全部」
いつか絢斗の言った言葉を引用し、志は重なるように絢斗の上に覆いかぶさった。
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