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唇を塞がれる。素肌が密着し、熱を帯びる。
貪るように、志の口は絢斗を求めてやまなかった。唇から頬、耳を食み、甘噛みする。
絢斗の口から自然と甘美な声が漏れた。かすかな毒気を帯びたとろとろの蜂蜜が染み込んでいくように、指先から順に、全身が心地よい痺れに支配される。舌先で耳の中をなめられた瞬間、背筋がゾクリと粟立った。
これまで誰にも見せたことのない、自分ですら未知である一面を、志がゆっくりと切り拓いていく。耳や乳首が性感帯であること、自分の声とは思えない声が出たこと。今この場所で起こるすべての現象が初体験だった。
首回りでは飽き足らなくなった志が、鎖骨や乳首にちゅっちゅと音を立てて口づけていく。
絢斗はどうすることもできなかった。ひたすらに気持ちよくて、もっと、もっと、と志のからだに触れながら求めているうちに、再び下半身にムズムズとした疼きを覚えた。
「気持ちいい?」
志が右足で器用に絢斗の股を開かせる。どっしりと重い志のものが、絢斗のそれの先に触れた。
「俺は、ほら」
触れ合ったものを、志はそっとこするように動かした。
「めちゃくちゃ感じてる。からだがさ、おまえを求めてんだよ」
志の右手が、絢斗のものを握る。ゆっくりと上下に動かされると、全身がびくんと脈打った。
「いっとくか、もう一回?」
「ぁ、ふっ……!」
唇を塞ぎながら、志は右手を動かし続けた。うまく息継ぎができなくなると、志はすぐに気づいて呼吸する隙間を作ってくれた。
二人とも息が弾み、額には汗がにじむ。志が耳もとで「絢斗」と甘く妖艶な声でささやいた瞬間、胸の奥でなにかが弾け、白い蜜が志と絢斗のからだを汚した。
眩暈がするようで、絢斗は右腕で目もとを覆い隠した。顔が熱い。
はじめてなのに二度もいかされ、興奮した心は行き場を失い、わけもわからず漂っていた。気を抜くと泣いてしまいそうだった。
「絢斗」
志が頬に唇を寄せてくる。
「ごめん。つらい?」
額の汗を拭ってもらう。絢斗は首を横に振った。
「無理してない?」
もう一度首を振る。気づかってくれることが嬉しいのに、伝えたい言葉が喉の奥でつっかえてうまく出てこない。
「……ぁ」
「ん?」
「あ……ぁ、の……」
もどかしい。ちゃんとしゃべれるようになったはずなのに、肝心な時に臆病な自分が顔を出す。
けれど志は嫌な顔一つせず、優しく微笑んで絢斗の頬を右手で包み込んでくれた。
「つらくないなら、もうちょっとだけ付き合ってくれると嬉しい」
からだに飛び散った白い蜜を指ですくい上げた志が、妖艶に口角を持ち上げた。
「今よりもっと気持ちいいところへ連れてってやるから」
言い終えるなり、志は絢斗の両足を大きく広げ、その間に自らの足をすべり込ませた。
「ひぁっ……!」
蜜で湿らせた志の右の指先が、絢斗の後ろの窄まりに押し当てられる。
「い……!?」
「大丈夫。からだの力、抜いてて」
中指がするりと絢斗の中に侵入してくる。猛烈な違和感に、絢斗は自分のものとは思えない声を上げた。
イヤだ。気持ち悪い。なにより、志の大事な指をこんな風に汚してしまうことが耐えられなかった。
「い、ぃや……!」
「痛い?」
「ちが、ちが……、き、きき汚い、から……っ」
「どこが。汚くないよ」
志は指を抜こうとしない。それどころか、迷うことなくどんどん奥へと進んでいく。
みるみるうちに奥まで入って、指の付け根までしっかりと収まる。くい、と中で動いた指先で内側の壁をこすられると、背中が大きく仰け反った。
嬌声。最初の違和感は強烈で、うまく対処できずからだが震えた。痛い。下腹部が不快感に襲われる。
顔を背けると、志が絢斗の見せた首筋にキスをした。優しくて甘い刺激に心が少しだけ軽くなる。
志の長い指が中でうごめく。はじめのうちは受け入れられなかったのに、慣れてきたのか、次第に不快感は消えていった。
むしろ、気持ちよく感じてくる。ある一点をこすられた時、思わず「あっ」と声を上げると、志は「ここ、いい?」とそこばかり熱心に触れてきた。
こすられるごとに、ピりつく刺激が全身を駆け巡る。気持ちいい。これまで感じたことのない痛みは今や爽快ですらあった。
「嬉しいよ、俺」
志がもう一本、指を窄まりの中へと入れてくる。
「絢斗がちゃんと、俺を感じてくれてること」
感じている。志が拓いてくれるからだは、もはや志のためにあった。
二本の指が窄まりを広げ、裂けるような痛みが走る。叫びたいほど強烈なのは最初だけだが、実際に叫んでも防音仕様のこの部屋では誰に咎められることもない。
ひとしきり声を上げ、そのうち快感に身をゆだねるようにリラックスし始める絢斗。目を閉じると、まぶたの上から志が口づけてくれた。
「寝るなよ」
色っぽくささやいた志が窄まりから指を抜き、絢斗のものに手を触れた。びくん、と跳ねるように動いたそれは、懲りずに大きく膨らんだ。
「俺もそろそろ、我慢の限界なんだよね」
両足を持ち上げて絢斗の腰の位置を正した志が、絢斗に覆いかぶさるようにして自らの性器を絢斗の後ろの窄まりに押し当てた。
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