神殿に行くみたいです

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 かなり戸惑った様子のシャンディは部屋から出て行ってその足音も遠ざかって行くのが分かった。どうやらタオルと衣装を届けに来てくれただけのようだ。  つい興奮して困らせちゃったな…反省。まさかだってシャンディに会えるなんて…可愛がってたキャラが目の前に…!  あっ…いかんいかん…早く着替えて行かなくちゃ。 「では大聖堂に行って洗礼を賜りましょう。ここからはそう遠く無いですよ。」  そうして今の清めの部屋から歩いて5分。中央の石垣の廊下を渡りここの神殿の母堂に辿り着いた。周りに人が居ないなと思ったら、洗礼の為に今人払いをしているそうだ。  内装は白をメインに作られており真ん中奥には巨大な神の像が置かれている。入り口からでも圧迫されるように大きい像。初めて見る神の像に圧巻された。 「ふふ、驚かれているようですね。帝国の主神、ハルファーデの像です。」 「初めて見るので…吃驚しました…。」  しかも帝国に主神なんて居た事実に驚きだわ。そんな設定聞いた事も無いけど。 「では、像の前までいらして下さい。」  神の像の前まで行き、片膝をついて両手を握り目を閉じ祈りをする体勢をする。 「洗礼の儀が始まり、私が唱えます。洗礼の名は貴方自身が知る事になるのでしっかり神の声を聞いてください。」 「……はい。」  ちゃんと聞き取れる自信がありませんが頑張ります………。  「“我らが父…我らが母…我らの主よ。旅立つ子に祝福の名を…神の使徒が願い立てます。”」  すると俺の頭上に、古代語で書かれた神聖力の陣が現れ静かにゆっくりと雪のように欠片が舞い降りてくる。それが全て俺に注がれた時、洗礼名が与えられるのだ。 「“其方の祝福の名はーー”」 『レリアルフェン』  頭の中に響く誰かの声。これが、神の声って事…?しっかりと、暖かく伝えられたその名前が自分の身に染みていく感覚が起こる。  変な感覚だが、不思議と心地良い。 「……終わりました。名は受け取れました?」 「はい、大丈夫です!」 「では神殿に登録するのでこの貼りに指を軽く刺して血をこの用紙に垂らしてください。」 「指を…?」  ハーリィが持ってるのは小さな針が上向きにセットされてる道具と、真っ白な長方形の細長い用紙。 「この用紙に血を垂らすと洗礼名が浮き上がり、それを燃やす事で自動的にこの神の像に記録されます。勝手に他人が見る事など出来ませんのでご安心を。ここから洗礼名を引き出せるのは教皇のみですから。」  あまり気は進まないが、針にプツッと指を刺し、横にある用紙に垂らすと確かに文字がふわぁ…と浮き上がってきた。 「…“レリアルフェン”………ですか。」 「?どうしました?」  なんか珍しい物を見るような笑顔でこちらを見てどうしたんだ一体。 「レリアルフェン…帝国神話の調律神の名前です。神の名が洗礼名になる人物が現れるとは……これからの世代は安泰ですね。」  ………何て?調律神?神の名…?明らかにとても珍しい…というか有り得ない…みたいな反応だよなこれ。 「私は今35歳になるのですが、生きてて2人目です。神の名が洗礼名にるのは。記録でもそんな事見た事ないので…生きてる間にそんな方を目の前にできて嬉しいです。」 「えっ、35歳!!?」  神の名よりも年齢の方が驚きだって!!普通に20代半ばくらいだと思ってたのに…!  しかも二人目…?  というか脇役なのにそんな豪華な名前頂いていいの!?  俺が困惑してる間に、ハーリィは用紙をビリっと破るとそれはボッ!と鳴って燃え、塵となった。 「では次に魔力測定をしましょうか。」  そうして運ばれて来たのは大きめな水晶球。しかも持って来たのは神殿の人では無かった。明らかに貴族の子供。……しかもかなりご機嫌斜めのようだけど……何があったんだ。 「レイフロ殿、ありがとう。助かるよ。」 「…俺を荷物係にするな。偶々用があったから持って来たまでだ。」  なんてのが目の前で繰り広げられているが今はそんな事気にしてられない。必死に頭を回転させ記憶を振り絞る。  …レイフロ…?ってあのレイフロ?ディアレス大公家のレイフロ?16歳で大公家の当主になったレイフロ?    オニキスみたいな髪、黒の中に青や黄色の色彩が入ってる珍しいブラックオパールの瞳。鋭い眼光……間違いない。  攻略対象だったがラスボスであるレイフロだ!  ディアレス大公家は皇家の血筋が入った貴族序列1位の家柄で、レイフロは史上最強といえる魔力を持っている。16歳で病で亡くなった父に代わり当主となり冷酷冷徹で有名。主人公を愛したが、愛されないと知りその嫉妬で周りを破壊しないと気が済まなくなって帝国を滅ぼそうとするラスボスになってしまう……っていうのがどのルートでも定石で。  どんだけ頑張ってもレイフロルートは開拓されなかった。  そんな超エキストラクレイジー級難易度鬼のキャラ、レイフロが今目の前に! 「ではルイス様。水晶に両手を当ててくれますか?」 「あっ、はいっ…!分かりました!」  現実に戻され言われたまま水晶に手を当てる。それに、直ぐ帰ると思ったレイフロはジーッと見ている。ただジッと見てる。そんなに俺の結果が気になるのかな…どうせ大した魔力は持ってないのに。  そして数秒したら白いオーロラのような光が水晶の中で波を打ち始めた。  綺麗…。なんて見とれている俺とは裏腹に、ハーリィとレイフロまで目を見開いている。 「…白……!?そんな事が…」 「おい、なんか変だぞその水晶…」  白い光が水晶を一杯にしたその瞬間、水晶にピキッとヒビが入りそのままパリーンッと砕け散った。その衝撃で、水晶の中に収まりきらなかった白い光が水晶の砕けるのと同時に波動を溢れさせる。 「うわっ……吃驚した…!」 「ルイス様、怪我は無いですか!?」 「だ、大丈夫です!特には何も!…でもこれは一体どうなって…」 「……初めて見た現象ですが、恐らくルイス様の魔力量が水晶の受け止めれる魔力量を超えたんだと思います。」 え 「しかも、とても貴重で珍しい白の魔力!」 は 「貴方は何処まで珍しいお方なんですか…」  そんな嬉しそうに言われても…白の魔力って何?  というか………ルイス()ってば本当に脇役だよね!!??
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