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脇役設定はどこにいったんですか
ただ呆然と視線を下に、粉々に割れた水晶球を見つめるルイスこと自分。
なんでも自分の魔力は珍しい白属性の魔力らしく、しかも魔力量が水晶の測定できる量を大幅に超えてしまったらしい。
脇役の筈が何故こんなチートみたいな事に…?
「……お前、ヴァレンタインと言ったか?」
「え?あ、はい…ルイス・ヴァレンタインです…」
「ヴァレンタイン侯爵の息子…か。」
レイフロが怪訝な顔でそう尋ねて来た。何だか表情が怖いがどうしてなんだろう。確かに、この光景には驚愕して当然だけど…なんだか色々品定めされてるような感覚になる。
というか、この世界における魔法学とかイマイチよく分かってないから白属性の魔力がそんなに珍しいものなのかも今初めて知った。
「…あの、白の魔法はそんなに珍しいものなのですか?」
「勿論でございます。白の魔法というのは我々神官達が使う神聖力とは種類の違う癒しの力。どんな万物でも、人でも、獣でさえ癒しの力を与える事が出来る。我々の神聖力は人には有効ですがそれ以外は効果を成しません。簡単に言うと神聖力を超えた癒しの力。」
やだ、何それ。どんなチートですか。
「それ故に1つの魔法を使うだけでかなりの魔力量が必要になるのです。なので、それだけの魔力量を持って生まれてくる人間がそもそも希少なのです。人間の魔力量では白の魔法など使えませんから。」
「え、それじゃあ…」
「白の魔法を使えると言ったら森の番人エルフとか一部の精霊とか…ですね。洗礼の名といい、貴方は余程神に愛されているようです。」
女神様…こんなチート設定しちゃったなんて聞いても無いし頼んでも無いですが。そういうのは主人公に与えちゃって良かったんですが…。
「…だが、暫くはその事実は伏せた方が良いだろうな。」
突然レイフロが何を言い出したかと思えば、ハーリィも深く頷いた。
「神殿に使える身である私が言うのもおかしいですが、貴方が白の魔力保持者と知られては神殿はどんな手を使っても貴方を自分達のものにしようとするはず。……それは皇室も同じです。それ以外にも貴方を手に入れようとする者達が現れるでしょう。」
………やっぱり主人公に与えて下さいこんなチート設定。俺は脇役アドバイザーとして主人公にラスボスルートを開拓させたいだけなんだ。
「侯爵様にも私から説明しましょう。では最初の部屋に戻りましょうか。」
「……ルイス。」
「はい、何でしょう。」
というかいきなり呼び捨てかいこのラスボス。
「手を握ってみてくれ。」
「……??????」
どういう意味か分からず、必死に動揺を隠す。どうして急に手を握ってくれなんて??
まあ手を握るくらい…と思い恐る恐る握るとレイフロは黙って握ってる俺の手を見詰める。その間1分。1分もこんな気まずい空気感手を握ってる。ハーリィも戸惑っている。それはそうだ。俺だって今世1番戸惑っているんだから。
「…あの、公子様…?」
「………大丈夫だ。」
えっと…あのぅ…何が大丈夫?
「話もあるから近いうちに我が家への招待状を出す。ちゃんと見るように。いいな?」
それだけ言い残しレイフロはさっさと去ってしまった。一体何だったのか。何で手を握れなんて言ったのか。俺とハーリィはお互い戸惑った顔で目を合わせ首を傾げた。
その後、両親が待つ部屋に戻りハーリィが先程の話を進める。最初はかなり驚いた様子の両親だったが、俺を世界の魔の手……から守る為に必要な事をハーリィと色々話していった。
それにしても、俺の洗礼の担当する神官がハーリィで良かった。他の人だったらあっさり神殿に売られてそうだ。
「そして、今後の為にも魔力の使い方は私が教えようと思います。」
「えっ…神官様が?」
「白の魔法について書かれてる書物は全て神殿で管理していまして、それを閲覧できる権限があるのが私と他2人しかいません。なので、白の魔法とは何なのか、教えれるのも私くらいしか居ないのです。魔力をコントロール出来る様になるまで先生になりますよ。」
「それは有り難い。ぜひお願いします。」
父はハーリィの提案を受け入れた。月に2度、俺が神殿に赴きハーリィに魔力の扱い方などを学んでいく。使い方なども神聖力を使う神官に習う方が良いだろうという父の考えでもあった。
そんなこんなで俺の洗礼は無事終わり、邸に帰ってこれた。リヒトが笑顔で出迎えてくれてハートにズキュンと来たのは勿論の事。
そして宣言通り、レイフロ・ディアレスから大公家への招待状が届いた。今まで大公家と我が侯爵家は余り交流していなかった為父が特に警戒していたが、神殿で偶々会ったことを話すと渋々という感じで大公家に行く事を許可してもらった。
話があるって言ってたけど、俺は別に無いです本当に。
「…兄さん…大丈夫?」
「あぁ…うん。失礼しないようにって思ってるだけだよ。」
「俺も一緒に行きたい…兄さん心配…。」
「リヒト…っ…こんな優しい弟を持って俺は嬉しいぞっ!」
本当…リヒトも連れて行きたいけど、俺しか招待されてないから無理なんだよな…。
という訳で招待状が来てから3日後…大公家に行く当日。護衛兼執事のランガードと一緒に向かった。
「…坊っちゃま。その公子様とはお話をするだけですよね?」
「え?うん、その筈だけど…何で?」
ランガードの無表情の中から読み取れる若干機嫌の悪い部分。顔は良いのにいつも無表情だから周りから怖がられてるんだけど、ずっと一緒にいる俺やライラはランガードの表情の変化は直ぐ見分けがつく。
「…旦那様が、坊っちゃまを襲おうとする輩ならば直ぐ殺せと言われているので。」
「……一応相手は大公家ね。序列一位の家だからね?お父様も何を言ってるんだ…」
…まあこの世界は同棲同士の結婚は普通と考えられてるからそう心配してくれてるんだろうけど……これでも脇役…の筈だからきっと大丈夫。攻略対象だろうが俺に好意を向けるなんて無い無い。
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