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死んだけどBLゲームの世界に転生できたので幸福です
ピー…ピー…
先日、医師から告げられたのは手術ではもうどうしようもできないとの事。19歳の時に発症したこの末期癌とかいう病気は享年21歳というまだまだ若い俺の命を容易く奪っていった。
意識が遠のいていく中、両親の泣いて縋る姿をぼんやり眺めて「今までありがとう」と伝えたかったが、心の臓が鼓動を止めた。
目の前が真っ暗だ。俺は死んでしまったんだな…。心残りと言えば、俺ひとりっ子だから母ちゃん父ちゃんがよぼよぼの老人になった時、誰か助けてくれるかなってゆう心配と、自宅ベッドの枕下にエロ本を隠していたまま…の2つかな。
あとは…---
なんて多分死後の世界に向かっている中考えていると目の前に丸く輝く物体が。
『さて、初めまして笠本風太君。私はただの女神。役目を終えた魂を、次の新しい生へと繋げる仕事をしている。言わば転生というやつさ。』
「女神様…!?」
『君の、笠本風太としての生は終わった。次の新たな生へ導く訳だが…何か要望とかあるかね?』
「要望…?例えばどんな?」
『今度は地球ではなく、異世界へ転生したいとか、美男美女にしてくれとか、はたまた君の好きなゲームとやらの世界に送ってもいい。』
ゲームとな!?そんな事も出来ちゃうのか…女神様半端ねえ…。
ゲームの言葉で1つ思い出した。そう言えば、入院してる間やっていたゲームがあった。
それは、『蒼き薔薇園』というBLゲームをひたすらやっていた事。腐男子だった俺は、そのゲームに夢中になり全ルート、バッドエンドまで全キャラ全てクリアした。
…のだが、そのゲームに出てくるラスボスルートという隠しルートがあるらしくそれは何度やってもそのルートに繋がる道がなかったのだ。
もし、その世界へ行けるのなら…
「女神様…俺が好きなゲーム…蒼き薔薇園っていうゲームの世界に転生する事は出来ますか?」
『可能だ。君の記憶からデータを抜き取り世界を構築する。』
「…あ!あと、それと…出来たらルイス・ヴァレンタインってゆう人になりたいんですけど…」
『ふむ…まぁいいだろう。若くして亡くなった君へのプレゼントだ。特別に2つ叶えてやる。』
「ありがとうございます!」
ふふふ…何ていう奇跡だ。まさかゲームの世界に転生?できるなんて!
しかも蒼き薔薇園において、『ルイス・ヴァレンタイン』は脇役の案内人!プレイヤーが困った時にアドバイスしてくれるキャラなのだ。
どんな感じの見た目だったか覚えてないけど、脇役だしまあ普通の男だろう。
ルイスになって、主人公と攻略対象達。そして、生前にクリア出来なかったラスボスルートを開拓してみせる!!
腐男子魂舐めるなよ!
『世界の構築に成功した。では、これから君をその世界へ送り出す。…今度は末永く幸せな人生をどうか歩んでくれたまえ。』
「ありがとうございます、女神様。」
すると、輝く丸い物体はシュンッとその姿を消した。そして俺はとてつもなく眩い光に包まれ目を閉じる。
暫くして閉じていた目を開けると、豪華な天蓋が視界に映る。左右に見回すと、とても広いフカフカベッドで寝ていたようだ。
起き上がると、視線の高さがかなり低い事が分かる。自分の手を見るとかなり小さい。自分は今何歳くらいなんだろうか。
それにしても、自分が寝てるベッドがあるんだからここが自室なんだろうけど…かなり豪華だ。そう言えば、ヴァレンタイン家は侯爵の貴族だったっけ。
すると、部屋の扉がガチャと開いて1人のメイドが入ってくる。
「あら、お目覚めですねルイス御坊ちゃま。」
「おはようライラ。……ハッ」
自然と名前が出てくる。というか、今までのルイスとしての記憶が少しずつ鮮明に浮き出してきた。俺の専属メイドのライラ…と、あともう一人護衛兼執事のランガードという男が居る。
「御髪から整えましょうか。鏡の前にお座りください。」
「はーい。」
記憶の中では、ルイスはそれなりに元気な子のようだ。屋敷の使用人達とも仲は良いらしい。うんうん、良かった良かった。ま、脇役だしそんなきつい性格では無いと思ってたけど平和そうで何より何よ……………………。
小さく頷いていた顔を上げて正面…鏡に映る自分を見て思考が止まり目が点になる。
そして、勢いよくガシッと鏡を両手で掴んで凝視した。
「お、御坊ちゃま!?どうしました!?」
「………な……な………!」
肩がフルフルと震え、困惑が隠せない。何故なら、鏡に映る自分…もといルイスの容姿に問題がある。線が細くサラサラなプラチナブロンドの髪に長い睫毛、宝石みたいな水銀の瞳。白い肌。大きな目にスッと伸びた鼻。健康色な唇。
こ、これは…これはッッ…!!!
美形すぎるじゃないか!!!!何だこれは、脇役の美貌じゃ無いんだけど!?普通に攻略対象入っちゃいそうな感じだよ!?え、ルイスってこんな容姿だったの?!
「ら、ライラ……お、僕はルイス…だよね…?」
「え、ええ…恐れながら貴方はこのヴァレンタイン家の由緒正しき後継者のルイス・ヴァレンタイン様であります……。」
困惑したまま訪ねると、ライラも困惑しながら答えてくれた。
「……大丈夫。ごめん…。」
「はい……」
スンッと大人しく椅子に座り直した。身支度の準備を進め始めたライラは苦笑いを見せる。
そして、そのまま朝食を食べる為に一階へ向かった。使用人達が俺を見かける度「おはようございます。」と笑顔で挨拶してくれる。
ここの人達は本当に良い人ばかりのようだ。屋敷の雰囲気も良いからきっと父母がしっかり管理しているのだろう。
「ああ、おはようルイス。」
「今日も可愛いわね私の小鳥ちゃん。」
あ…この二人がルイスの両親。俺の目は父譲りで、髪色や顔立ちは美人な母に似たようだ。…というか二人とも美形すぎやしないか?ゲームにはこんな事出てきた事ないから知りもしなかった。そりゃ、ルイスも美形になりますよ。
「おはようございます。お父様、お母様。」
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