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第7話 それは待って下さい!
気が付くと私はベットの上だった。
そのベットは固くてゴツゴツして寝心地が悪かった。
周りを見渡すとここは部屋という感じでない。
至る所に鉄格子が張り巡らされ身柄を拘束されている様だった。
私は何故、自分が牢獄に囚われているのか疑問に思った。
毒針に刺されてからの記憶は全くない。
気を失ってる間にどんな出来事が起こったのだろうか?
「おっさん…起きたかよ…ヘラヘラ…」
声の主はエルザだった。面白いものでも見るかの様にうっすら笑っている。
その隣には勇者の様なド派手な格好をした女の子が佇んでいた。
「申し訳ありません。エルザがお世話になったというのに…」
その女の子は派手な外見とは裏腹に良識的で丁寧な言葉遣いだった。
年頃は一緒だがエルザやアナスターとは違ったタイプの女の子だった。
身分は良さそうではないが苦労を知っている。
私は彼女に親近感を抱いていた。
「山田さんと仰るのですよね?私は勇者のマリーシアと言います。窮屈だと思いますが今しばらく我慢してください」
マリーシアは深々と頭を下げた。勇者というのはこんなにも礼儀正しいものなのだろうか?
「私はなぜ牢獄に入れられたんですか?」
「山田さんは異世界からの転移者なので国もどう扱って良いのかわからないかと存じます。何分、こんな事態は初めてで警戒してるのかと…」
確かに訳の分からない世界から来た人間を野放しには出来ない。
しかし私はエルザと違って何の力も無いし無害だと言いたかった。
「おっさんは暫くそこで大人しくしてろ!」
エルザの言葉に私は目的を思い出した。一刻も早く現世に戻らなければならない。
「スマホ!スマホを見せて下さい!」
「すまほ…?」
「あのプルプル鳴って光ってたやつ!」
「ああ…あれね…」
エルザは道具袋からスマホを取り出し、私に差し出した。
しかし電源が切れている。起動ボタンを押してもうんともすんともいわない。
バッテリーが無くなってしまったのだろうか?
「宝箱に、これと一緒にバッテリーケーブルが入ってませんでした?」
「ばってりーけーぶる…?」
「細くて長い紐みたいなものです!」
「ああ…これか?」
エルザは道具袋からバッテリーケーブルを取り出した。
しかし私は重大な事に気付いてしまう。ここにはUSBの差込口もコンセントも無い。
電気だってないのではなかろうか?
私は落胆してその場に座り込んだ。
「ところで毒から貴方を救ったのアナスターです。ちゃんとお礼は言ってくださいね」
マリーシアの言葉で私は我に返った。そうだ私は死ぬ寸前だったのだ。
アナスターが解毒を行い、ここまで運んでくれたのだろうか?
「アナスターは今どこに?」
「貴方をここから出すために王に掛け合ってます」
ショックを受けた。もう私はアナスターに頭が上がらないだろう。
ここまで世話になったらもう下僕になれと言われてもしようがない。
私はアナスターに恩を返さなくてはと強く思った。
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