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「ふぁ……」
一日を終えて、欠伸を隠すことなく盛大にかましながら帰り支度をする。朝絡んで来たあいつは部活があるようで、「またねー!」と一言告げて消えていった。
家へ帰る途中、近くの民家から耳をつんざくようなバリンッという音がした。目を向けると、縁側のある所のガラス扉が割れている。近くには、人影もある。
「……もしかして、空き巣か?」
今朝の話を思い出す。目撃証言のない空き巣。この辺りを狙っている泥棒。
話を聞きながら俺には関係ないと他人事だったが、こうなれば別だ。そっと塀に隠れて息を潜める。隙間からちょうど様子が伺える。手にはスマホを握り、いつでも110番できるようにしてある。あとは、その瞬間を見たらすぐに連絡しよう。
「な、なんだ!? ……うわあああああぁっっ」
外まで聞こえる大きな声で争う声がした後、まさに絶叫と表すべき悲鳴が辺り一体に響いた。
……俺は、見てしまった。
人が、人の目を抉る瞬間を。
その時、理解した。目撃されないんじゃない。目撃できなくしてるんだ。人の目を盗んで空き巣に入ってるんじゃない。人の目を盗むために強盗に入ってるんだ。
泥棒が振り向く。目が合った。次の獲物を見つけたとばかりに、泥棒が笑った気がした。
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