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「ねぇ、あのニュース見た?」
弾んだ元気な声とともに、柔らかい茶髪が視界に入ってくる。この前の席替えで隣になり、最近話したばかりの男だ。身長が俺より小さいためか、上目遣いになっている。
「あのニュース? どれだ?」
ここ最近は、物騒なものが多い。どこかの子どもが川に流されたとか、同一犯と見られる連続傷害事件とか。良くないニュースばかりが報道されて騒がれているため、すぐにはピンと来ない。
「ほら、空き巣泥棒が多発してるってやつ! あれ、この辺ばっかだろ?」
「ああ……そういえばそうだな」
昨日、母さんも知り合いが空き巣に入られたって言ってたっけな。確かに、この高校の周辺ばかりが被害にあっている。
「母さんの知り合いが被害にあったって言ってたな」
「まじ? 僕の友達も被害にあったらしくてさ、やばくね?」
「そうだな……あれ、一人暮らしなんだっけ?」
「そうそう、だから怖いんだよねー」
ニコニコと明るく話しているため、本当に怖がってるようには見えない。だが、確かに身近で被害にあった人がいれば、多少警戒するのもわかる。
「戸締りは気をつけてるけどねー、窓とか壊されたら意味無いもんなー」
はぁっとため息をついて、大袈裟に肩を落としている。
話しているうちに教室に人が増えてきた。ガヤガヤしていて、騒がしい。周りからはアイドルの話や今日の授業構成への嘆きなどが聞こえる。
「しかもさ、めっちゃ被害出てるみたいなのに、未だに目撃証言が全然ないらしいじゃん!」
「あー、そんなこと言ってたな」
「あーあ、早く捕まって欲しいなぁ。田中くんも気をつけてねー?」
「おう」
ホームルーム開始のチャイムとともに、勢いよくドアが開いた。担任の先生が慌てた様子で入ってくる。いつも雑に結ばれている一つ結びが今日は一段と雑でボサボサだ。
プリントを何枚か配り、連絡事項を黒板に描き、素早くホームルームを閉めた先生は足早に教室を出ていった。一限目の授業へ向かったのだろう。
俺も準備しないと。教科書と筆箱、ノートを出し、授業に備えた。
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