2022/9/27 「授業」

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「やばい、眠すぎる。」 今を時めく女子大生いわゆるJDのはずの私は今、逃げられない危機に陥っていた。 とにかく耐えきれないほど眠いのである。 時刻はお昼明けの3限の一時過ぎ。 しかも私の指定席はよりによって窓辺の為、暖かな日差しに誘われて今にでも夢の世界へlet's partyしそうな勢いであった。 でも仕方ないじゃない?お昼を食べた後に日差しを浴びる=寝る合図だって私の体に刻まれてしまっているんだもの。 しかしそれは私以外も同じのようで、少人数制教育の為8人しかいないクラス中6人脱落するという恐ろしい状況になっていた。 心なしかいつもは可愛くて癒されるはずのおじいちゃん先生のフランス語の発音に、棘がある気がする。 というか私の目を見て授業進めるのやめてくださいよ。 あぁ、こんなことになるんなら私も早々に寝ておくんだった。 先ほどから起きているせいで何度も当てられてしまうため、眠いのに無理に頭を働かそうとするせいで余計に何も考えられないという悪循環に陥ってしまっている。 もうあきらめて夢の世界に旅立つべきだろうか。 いやでも斜め前に座っている高橋さんの目が怖い。 それもそのはず私が眠ってしまったらこの教室で起きているのは先生と彼女だけになってしまうのだ。 それを避けようとしているのか。私は今獲物を狙う猫のような眼で高橋さんににらまれている。 けれどそれももう、限界かもしれない。 今一瞬目の前に朝食べたかったけれども、残すしかなかったチーズケーキが見えた。 あちらの世界からのお迎えがそろそろという合図なのだろう。 ごめんよ、高橋さん。一足お先に行かせてもらうぜと体の赴くままに瞳を閉じようとすると視界の隅に、首を180度に曲げ眠っている高橋さんが見えた。 ああああっ、先こされたぁ。 けれどももう、どう嘆いた所で後の祭りである。 私の必死な祈りは彼女には届かないようで、先生の目線は私にくぎ付けだ。 いよいよ絶対に寝れない状況になってしまった。 しかし私の睡魔はもうピークのレベル8まで及んでいる。 授業の残り時間は30分以上。どう頑張っても耐えられる気がしない。 今でさえフランス語の発音に絶対必要ないであろうヘッドバンキングをしていないと意識を保つことが出来ないのだ。 この恐るべき睡魔を抱えほぼマンツーマンとかした授業をどうやって切り抜けるか。いっそのことトイレにでも… っとやばい、一瞬意識が飛びかけた。もう頭も体もふわふわして何もできない。目を開けているだけで精いっぱいだ。 ごめんなさい。頼りない生徒で。あなたは何も悪くない。弱い私とこの時間と日差し。そして限りなくつまらないフランス語が悪いのよ。 あぁ先生。私はここでいなくなるけど、どうかお願い。あなたの大好きなフランス語のことだけは嫌いにならないでください!とドーム内で泣きながら叫ぶ自分が見えてきた。 もうそろそろやばいかもしれない。それにさっきから10秒おきに意識が飛んでいる気がする。 次波が来たらもうヤバいなどと思っていたら急にとてつもない睡魔に追われた。 もう無理だごめんなさい。と先生の方を見ると、そこには椅子のリクライニングを最大まで下げて幸せそうに眠る先生の横顔があったのだった。
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