大好きなママへ

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 私はあの子が大嫌い。  だって、私のママをとったんだもん。  小さいくせに人一倍(ひといちばい)五月蝿(うるさ)いあの子。泣き(わめ)いてママをいつも困らせてる。そのせいでママはすっかりやつれちゃった。あの子はママを幸せにはできない。ママを笑顔にしてあげられるのは私だけ。  それなのにどうして、ママ。どうしてママはあの子ばかり可愛がるの? あんな子のどこが良いの? 見た目は不細工だし、性格も乱暴だよ。本当に、どうしてかな。寝る前にいつも「世界で一番好き」って言ってくれたよね。あれは嘘だったの? 今はあの子がママの一番なの?  ああ、またあの子が泣きだした。五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い。何度思ったことか。口を塞いでやろうかなって。動かなくなるまで――。  でもね。  もしそんなことしたらママはきっと怒る。私のこと、嫌いになっちゃうかもしれない。それは困るの。  ママが久しぶりに私に触れてくれた。 「まみちゃん、このお人形さんはどう?」  その優しい声であの子の名前を呼ばないで。 「いらなぁい。きたないもん」 「そっかぁ。まあ、確かにちょっと汚いよねぇ。仕方ないかぁ」  ママ、私をどこへ連れていくの?  ママがいない。  ここはどこ?  熱い、怖いよ。  助けて、ママ、ママ、ママ――。    ねえ、ママ。  私のこと、今も世界で一番好き?  私はママのこと、世界で一番好きだよ。  今までもこれからもずっと――。  だから、絶対、ママから離れない。
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