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一人暮らしをしているマンションまでの道を歩く。 都心へは電車で1本で行ける街。 住宅街なのでそろそろ24時になるこの時間は駅前以外に人気はない。 治安は悪くないはずだけど、それでも夜の道は少し怖い。 スマホを片手に持ち早歩きで歩く・・・。 この顔のせいでよく変なのに絡まれるから・・・。 大急ぎで一人暮らしをしているマンションへと歩き、曲がり角を曲がった所でマンションが見えた。 それにホッとした・・・。 ホッとした瞬間・・・ いきなり、肩を誰かに叩かれた・・・。 この瞬間まで何の気配もしていなかったのに、誰かが私の肩を叩いた・・・。 全身の熱が一気に冷めていく・・・。 酔いも全てが引いて、勢いよく後ろを振り返った・・・。 そして・・・ その人物を見て、止めていた息をゆっくり吐き出した・・・。 「気配消さないでよ、弟君・・・。」 弟君だった・・・。 サッパリとした顔のイケメンで、短髪なのにお洒落にセットしてあり、身長は180以上あるらしい。 筋肉モリモリの身体はスーツを着ていてもよく分かる。 そんな弟君はフニャッとした笑顔で笑いながら私を見下ろした。 「気配消えてた?ごめんね!」 「心臓に悪いから本当にやめてよ。 あと・・・うちに来るつもり?」 「うん、金曜日だし。ダメだった?」 「別にいいけど・・・。 来る時は連絡してっていつも言ってるでしょ?」 「連絡しても仕事でダメになることもあるかもしれないからね。 お互いに期待して会えなくなると悲しいから。」 私の隣に並んで歩きだした弟君がフニャフニャの笑顔でそう言った。 「弟君は夜ご飯食べたの?」 「今回は張り込み中に食べられなかったんだよね。 ラブホテル街をひたすらグルグル歩いてたから。」 「ラブホテル・・・?」 「今回の依頼、不倫調査なんだよね。 依頼主から“今日会う約束してると思う”って連絡があったから張り込みしたけど、不発だった。 もう1つのラブホテル街の方だったかもな~・・・。 今回の方ともう1つの方をよく利用してるんだよね、2人の相手と。」 社会人3年目の25歳の夏、社員旅行中にナンパをされて知り合った弟君。 弟君は調査会社で働く調査員らしく、私にこんな情報まで漏らしてしまうユルユル加減。
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