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「この仕事してると結婚するのが怖くなるよ。
結婚もしてるのに不倫相手が2人もいるって、ヤバイよね?」
「それはヤバイね・・・。」
「只でさえ俺の父親がヤバイ奴だったから結婚が怖いのに、不倫調査の時は毎回もっと怖くなるよね。
でも俺の父親以上にヤバイ奴はまだいないから、それにホッとしたりもするヤバイ思考になってる。」
弟君の父親はヤバイ人で。
大きな会社の社長だったらしいけど、腹違いのきょうだいを9人も作ってしまったくらいヤバイ人。
更に・・・“弟”君に、“弟”という名前を付けたヤバイ人。
お母さんの産後の入院期間中に出生届を勝手に出してしまい、“弟”君は“弟”という名前になってしまったらしい。
海神も恥ずかし過ぎるけど、両親からの愛は感じる。
激しすぎるくらいそれは感じる。
弟君と出会ってからそれを考えさせられた。
だから、恥ずかし過ぎる大嫌いな名前ではあるけど、両親を恨むのはやめた。
“父親がヤバイ奴”と言いながらも、弟君はいつもフニャフニャと笑っている。
そのユルユルの笑顔に思わず私の力も抜けていく。
「ラブホテルを出入りする時に絶対にバラバラなんだよね。
2人で一緒の写真を撮りたいから、ラブホテル内に俺も入るしかなくて。」
「そうなんだ・・・。
それって、1人でなわけじゃないんでしょ?」
「会社の女の子と入ることになるだろうね。
出来れば隣の部屋に入りたい。」
ラブホテルに女の子と入る・・・。
弟君と私は付き合っているわけでなくて・・・。
告白をされたわけでもないし、身体の関係があるわけでもない。
ただ、連絡先は交換していてお互いの家も知っている。
たまにフラッと私の部屋に来たり、たまに連絡があって一緒に飲みに行ったり。
出会いがナンパだったけど、凄い感じの良い人で・・・。
私にしては珍しく気を許してしまった。
そんな弟君と一緒にいるのは楽で、この何だかよく分からない関係だけどそれで満足してしまっていた。
満足してしまっていたけど・・・。
仕事とはいえラブホテルに女の子と入るのだと思うとモヤモヤしてしまうのも事実だった。
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