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そして、私の部屋に・・・。 1Kの小さな部屋。 夏に引っ越したばかりだし部屋の中は綺麗な状態。 実家の私の部屋の方がずっと散らかっている。 鞄を床に置いてから、手に持ったままの名刺をまた見た。 星神ちゃんの名刺・・・。 私の最寄り駅の方が近くて先に降りたけど、それまでは楽しくお話が出来た。 別れる時には“星神ちゃん”と“海神ちゃん”と呼び合えるくらいの仲になり、連絡先まで交換をした。 私の部屋に入ってすぐ、いつも通り弟君は床に寝転がった。 そんな弟君に星神ちゃんから貰った名刺を見せる。 「この子、私みたいに“神”が名前についてたんだよ! “星”の“神”で“せいか”なの!!」 名前に“神”がついている人と私以外で初めて会った。 それがずっと話したいと思っていた女の人で嬉しくなる。 弟君は私の手から名刺を抜き取ろうとしたので、名刺を弟君に渡した。 私の部屋に来たらいつもゴロゴロしている弟君が珍しく少し真剣な顔になって・・・起き上がった。 「この名刺どうしたの?」 「今日貰ったんだよね・・・。 どうしたの?」 いつもフニャフニャしている弟君が少し鋭い雰囲気になった。 それに驚いていると・・・ 「この名刺の本人から貰ったの?」 「そうだけど・・・。」 「この人と知り合いなの?」 「知り合いだったんだけど話したことはなくて。 今日たまたま帰りの電車で見掛けたから話し掛けたんだよね。」 「たまたま・・・。」 弟君が珍しくフニャフニャではなく真剣な顔で名刺を見下ろしている。 「弟君、知ってる子?」 「知らない。」 そう言いながら名刺を私に返してくれた。 その名刺を受け取ってから弟君をもう1度見ると、今度は何やら考えている様子になった。 「海神ちゃんから話し掛けたんだよね?」 「そうだけど・・・。」 「視線を感じたからその人に気付いたの?」 「そういうわけでもなくて。 窓ガラス越しに私から気付いたんだよね。 私の好きな顔の女の子で。 サッパリとした綺麗な女の子だったから。」
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