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「そもそも、何で研究職の矢田さんから聞き出そうとしたんだよ。
あの人こそ絶対に加賀製薬を裏切らないだろ。」
弟さんが怖い顔をしながら村田隼人に聞いた。
村田隼人はソファーの背もたれに大きく寄りかかり、完全に開き直った顔をした。
「矢田が天才なのは知ってるからな。
この会社を絶対にデカくしたかった。
加賀の所よりも、絶対にデカくしたかった。」
そんなことを言いながら、小池さんのことをバカにした顔で見て・・・
「言うこと聞かせるためにやっておけばよかった。
無駄に薬の説明しただけだったな。
知識がないと矢田の話を聞いても訳が分からないだろうと思って、真剣に薬の説明してた。」
「とても分かりやすかったです・・・。
お陰様で、病院の先生方とも深い話が出来るようになって・・・。
先日は料亭でのお食事にも誘ってくださるくらいになって・・・。」
その接待の経費の申請が、先日の稟議書だった。
昔から可愛がってくれている先生方。
本当は先方が支払いをするところを小池さんが慌てて実費で支払いをしたらしい。
たまに小池さんがそういうことをするのが先生方からすると可愛いのだと思う。
先生方が後日こっそり営業部長に連絡をしてくれ、それで小池さんからたまに高額な経費の申請が上がってくるのだと分かった。
「その熱を他に向けたら良かったですね~!!
結構ヤバイ繋がりもありましたけど、村田さんカリスマ性もあるからかなり尊敬されてますよ?」
「ヤバイことしてる男を尊敬するなんて、それこそヤバイだけだろ。」
村田隼人が乾いた声で笑った。
そんな村田隼人を見ながら、私は初めて口を開いた。
「そんなに中岡部長のことが嫌いなんですか?」
私が言った言葉に村田隼人が固まった・・・。
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